医療コラム
韓国製ボトックスとアラガン社製は何が違う?FDA承認の「ナボタ」「ボツラックス」を当院が選ぶ理由
眉間や目尻、おでこのしわ、エラの張りなどに使われるボトックス注射。今では美容医療の中でも特に身近な治療となり、「初めての美容医療はボトックスから」という方も珍しくありません。
一方で、クリニックのホームページや料金表を見比べると、「アラガン社製」「韓国製」と製剤の種類によって料金が大きく違うことに気づかれると思います。「安い韓国製で大丈夫なの?」「アラガン社製のほうが効くの?」というご質問は、当院の診察室でも本当によくいただきます。
ご安心ください。ボトックスの製剤にはそれぞれ明確な特徴があり、ポイントを押さえれば選び方は難しくありません。今回は皮膚科専門医の観点から、アラガン社製と韓国製の違い、韓国製の中での「差」、そして当院が韓国製の中では米国FDAの承認を受けた「ナボタ」と「ボツラックス」の2種類に限って使用し、あわせてアラガン社製の正規品もご用意している理由を、できるだけわかりやすくお伝えします。
目次
そもそも「ボトックス」とは?
「ボトックス」は、本来は米国アラガン社(現在はアッヴィ社のグループ)が製造するA型ボツリヌス毒素製剤の商品名です。日本では、同じ有効成分を使った他社製品も含めて「ボトックス注射」と呼ぶことが一般的になっています。
A型ボツリヌス毒素は、筋肉を動かす神経の信号を一時的にブロックし、筋肉の収縮をやわらげる働きがあります。眉間や目尻のように「表情を作るたびに刻まれるしわ」をやわらげたり、エラの咬筋を細くして小顔効果を狙ったり、ワキ汗を抑えたりと、幅広い目的で使われています。
効果は注射後2〜3日ごろから現れはじめ、1〜2週間ほどで落ち着きます。持続期間は部位や量、体質によって異なりますが、一般的には3〜4か月程度が目安です。どのメーカーの製剤であっても、この基本的な仕組みは同じです。
アラガン社製ボトックス(ボトックスビスタ)の特徴
アラガン社のボトックスは、ボツリヌス毒素製剤の「元祖」ともいえる存在です。米国では2002年に美容目的での使用がFDAに承認され、世界で最も長い使用実績と豊富な臨床データを持っています。
日本では、2009年に「65歳未満の成人における眉間の表情じわ」を効能・効果として、美容目的のボトックスビスタが厚生労働省の承認を取得しました。その後、目尻の表情じわにも適応が広がっています。
国内承認製剤ならではの安心感
ボトックスビスタは日本国内で臨床試験が行われ、効果と安全性が確認されている製剤です。講習を受けて資格を得た医師しか使用できないなど、メーカーによる管理体制も整っています。
ただし、国内で承認されている適応は現在、「眉間」と「目尻」のしわのみです。おでこ、エラ、ワキ汗(美容目的)などへの使用は、ボトックスビスタであっても承認範囲外の使い方になります。また、薬剤費が高く、施術料金も高めになる傾向があります。
韓国製ボトックスが増えた背景と「製品ごとの差」
韓国は世界有数の美容医療大国で、ボツリヌス毒素製剤を製造する企業も数多くあります。2026年に発表された学術レビューでは、韓国国内で登録されている製剤は15社・19製品にのぼると報告されています。
韓国製の最大の魅力は、価格の手頃さです。アラガン社製と同等の効果を、より負担の少ない料金で受けられることから、日本でも多くのクリニックで使用されるようになりました。
「韓国製」とひとくくりにはできない
一方で、メーカーや製品によって品質管理や臨床データの蓄積には差があるのも事実です。韓国では2020年以降、ボツリヌス毒素製剤の製造・流通に関する手続きをめぐり、複数のメーカーが韓国食品医薬品安全処(MFDS)から製品承認の取り消しなどの行政処分を受けたことがありました(企業側が処分を不服として争い、裁判で企業側の主張が認められた例もあります)。
こうした経緯もあり、私は「韓国製だから安心」「韓国製だから不安」と国名で判断するのではなく、「その製剤が、どの程度厳しい審査をくぐり抜けてきたか」を見ることが大切だと考えています。その目安の一つとして、世界で最も審査が厳しいといわれる米国FDA(米国食品医薬品局)の承認があります。
FDA承認の韓国製ボトックス「ナボタ」と「ボツラックス」
FDAの承認を得るには、米国などでの大規模な臨床試験で有効性と安全性を示すだけでなく、製造工場が米国の基準を満たしているかどうかも厳しく審査されます。数多い韓国製の製剤の中で、この関門を通過した製品はごく一部に限られます。
ナボタ(Nabota)——韓国製として初めてFDAの承認を取得
ナボタは、韓国の大熊(デウン)製薬が製造する製剤です。2019年2月、米国で「ジュヴォー(Jeuveau)」という製品名で、中等度〜重度の眉間のしわへの使用についてFDAの承認を受けました。欧州やカナダでも承認を取得しています。
ナボタの特徴は、アラガン社のボトックスと同じく分子量900kDaの毒素複合体からなる製剤である点です。成分の構造が近いため、アラガン社製に慣れた医師にとっても扱いやすい製剤といえます。また、承認審査の過程ではFDAが製造工場の状況を確認し、最終的に適合と判断したうえで承認に至っています。
ボツラックス(Botulax)——韓国国内でトップクラスのシェア
ボツラックスは、韓国のヒューゲル社が製造する製剤で、韓国国内で長年にわたり高いシェアを持つブランドです。世界50か国以上で販売されています。
2024年2月には、米国で「レティボ(Letybo)」という製品名で、中等度〜重度の眉間のしわへの使用についてFDAの承認を取得しました。承認は、米国と欧州で1,000人以上が参加した3つの第Ⅲ相臨床試験の結果に基づいています。承認までには一度ならず追加の対応を求められており、それだけ厳しい審査を経た製剤だといえます。
アラガン社製と韓国製のボトックスの違いを比較表で整理
ここまでの内容を、表にまとめます。
| 比較項目 | アラガン社製(ボトックスビスタ) | ナボタ | ボツラックス |
|---|---|---|---|
| 製造元 | アラガン社(米国) | 大熊製薬(韓国) | ヒューゲル社(韓国) |
| 日本の厚生労働省の承認 | あり(眉間・目尻) | なし(国内未承認) | なし(国内未承認) |
| 米国FDAの承認 | あり(2002年・美容目的) | あり(2019年・米国名ジュヴォー) | あり(2024年・米国名レティボ) |
| 有効成分 | A型ボツリヌス毒素 | A型ボツリヌス毒素 | A型ボツリヌス毒素 |
| 料金の傾向 | 高め | 比較的手頃 | 比較的手頃 |
FDAの承認を受けている眉間のしわについて見ると、いずれの製剤も臨床試験で有効性が確認されています。一方で、日本の厚生労働省の承認があるのはアラガン社製のみです。「国内承認の安心感を重視するか」「FDA承認の品質を確保したうえで費用を抑えるか」が、選ぶ際の大きな分かれ目になるでしょう。
ボトックスの製剤選びと同じくらい大切なこと
製剤の違いばかりが注目されがちですが、実際の仕上がりや安全性を左右するのは、製剤以外の要素であることも少なくありません。
「単位」はメーカー間で単純に置き換えられない
ボツリヌス毒素製剤の「単位」は、各メーカーの試験方法で定められています。そのため、FDAの添付文書でも、製剤ごとの単位は他の製剤と単純に換算できないとされています。製剤ごとの特性を理解したうえで、部位や筋肉の強さに合わせて量を調整することが大切です。
注入する位置と量が仕上がりを決める
同じ製剤でも、注入する位置や深さ、量によって結果は大きく変わります。効きすぎると表情が不自然になったり、まぶたが下がったように感じたりすることがあります。表情のクセや筋肉の動きを診察で確認し、一人ひとりに合わせて設計することが欠かせません。
短い間隔での繰り返しは避ける
ボツリヌス毒素製剤を短い間隔で、多い量を繰り返し注射すると、体内に抗体ができて効きにくくなる可能性が指摘されています。FDAの添付文書でも、眉間への再投与は3か月以上あけることとされています。「効果が切れてきたからすぐに追加」ではなく、適切な間隔を守ることが、長く治療を続けるうえでのコツです。
正規ルートで管理された製剤であること
ボツリヌス毒素製剤は温度管理が重要なデリケートな薬剤です。また、海外ではFDAの承認を得ていない製品をインターネットで購入し、自分で注射してしまうケースも問題になっています。医療機関で、信頼できるルートから入手し適切に保管された製剤を使うことが、安全の大前提です。
当院でアラガン社製・ナボタ・ボツラックスを使用する理由
当院では、ボトックス注射の製剤として、正規ルートで仕入れたアラガン社製のボトックス(ボトックスビスタ)と、韓国製の中でも米国FDAの承認を受けた「ナボタ」と「ボツラックス」の2種類を使用しています。韓国製については、FDAの承認を受けていない製剤は使用していません。
韓国製をこの2製剤に絞っている理由は大きく三つあります。一つ目は、FDAという厳しい審査を通過し、臨床試験のデータと製造工場の品質が確認されていることです。二つ目は、アラガン社製と同じA型ボツリヌス毒素製剤として、眉間のしわでの有効性が臨床試験で示されていることです。そして三つ目は、品質を確保したうえで、患者さまが続けやすい料金でご提供できることです。
ボトックスは一度で終わる治療ではなく、3〜4か月ごとに続けていくことで満足度が高まる治療です。私は皮膚科専門医として、「品質に妥協しないこと」と「無理なく続けられること」の両立が大切だと考え、韓国製ではこの2製剤を選んでいます。一方で、「日本国内で承認されている製剤で受けたい」という方には、アラガン社製のボトックスビスタもお選びいただけます。診察で治療部位やご希望、ご予算をうかがったうえで、一人ひとりに合った製剤をご提案します。
※ナボタ・ボツラックスは国内未承認医薬品です。当院では医師の責任のもと、国内の輸入代行業者を通じて入手しています。国内では同一成分のA型ボツリヌス毒素製剤として「ボトックスビスタ®」が承認されています。ナボタ・ボツラックスは米国FDAで承認されていますが、重大な副作用の可能性が否定できるものではありません。
※主なリスク・副作用:注射部位の痛み・赤み・腫れ・内出血、頭痛、まぶたや眉が重く感じる、表情の違和感などが生じることがあります。妊娠中・授乳中の方は施術を受けられません。効果には個人差があります。
まとめ
アラガン社製と韓国製のボトックスは、どちらもA型ボツリヌス毒素製剤であり、基本的な仕組みは同じです。大きな違いは、日本の承認の有無、臨床データの蓄積、そして料金にあります。そして韓国製は製品ごとの差が大きいため、「どの製品か」を確認することが何より大切です。
当院では、国内承認のあるアラガン社製の正規品と、米国FDAの厳しい審査を通過したナボタ・ボツラックスをご用意し、診察で表情や筋肉の動きを確認したうえで、自然な仕上がりを目指した注入を行っています。「ボトックスに興味はあるけれど製剤の違いがよくわからない」「以前ほかで受けて不自然になったことがある」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。
- (参考文献)
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Dressler D, et al. Korean botulinum toxins. J Neural Transm (Vienna). 2026;133(6):971-975.
U.S. Food and Drug Administration. JEUVEAU (prabotulinumtoxinA-xvfs) Prescribing Information. 2019.
U.S. Food and Drug Administration. LETYBO (letibotulinumtoxinA-wlbg) Prescribing Information. 2024.
- (執筆者情報)
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小谷 和弘
日本皮膚科学会 皮膚科専門医
厚生労働省指定 麻酔科標榜医
日本内科学会 認定内科医

