イソトレチノイン
イソトレチノインとは
イソトレチノインは、ビタミンA誘導体の一種で、皮脂腺の働きを抑えることで過剰な皮脂分泌を減少させ、ニキビの炎症を抑える効果があります。特に、他の治療法では効果がみられない重度のニキビや、再発を繰り返すニキビに対して有効な内服薬です。
なお、イソトレチノインは日本では未承認のため、保険が適用されない自費診療になります。
イソトレチノインはこんな方におすすめです
- 重度のニキビに悩んでいる方
- 他の薬剤(外用薬や抗生物質)で効果が得られなかった方
- ニキビの再発を繰り返し、根本的に改善したい方
- 肌質を根本的に改善したい方
- ニキビ痕が残ることを防ぎたい方
イソトレチノインのニキビへの効果
イソトレチノイン内服は、ニキビの根本的な原因に作用し、長期的なニキビやニキビ痕の改善を図る治療方法です。ここでは、イソトレチノインがニキビにどのような効果をもたらすかについて詳しく説明します。
新たなニキビの予防
イソトレチノインは皮脂腺を縮小させることで、過剰な皮脂の分泌を抑制し、毛穴の詰まりを防ぎます。新たなニキビの発生を効果的に抑制し、長期的な肌の健康を維持します。
炎症性ニキビの減少
増殖したアクネ菌を排除するために免疫反応が働くと、炎症が起こります。炎症の強いニキビの場合は、免疫反応が過剰に働いてしまっています。イソトレチノインには抗炎症作用があり、免疫反応を正常化させて、炎症を伴う赤く腫れたニキビを鎮静化させます。治療を継続することで、ニキビが発生する頻度と重症度を大幅に減らすことができます。
ニキビ痕の予防
ニキビが悪化して痕になる前に、イソトレチノインが早期に炎症を改善し、皮膚の再生を促進することで、ニキビ痕の発生を予防し、発生したニキビ痕の症状を軽度に留めます。
イソトレチノインの作用機序
イソトレチノインは、ニキビの発生メカニズムに対して多角的に作用します。イソトレチノインの作用機序には次のようなものがあります。
皮脂腺を縮小させて皮脂分泌を抑制する
イソトレチノインは皮脂腺のサイズを縮小させ、過剰な皮脂の分泌を抑えます。皮脂の分泌が減ることで、毛穴の詰まりが防がれ、ニキビができにくくなります。
皮膚細胞のターンオーバーを促進する
イソトレチノインは皮膚細胞のターンオーバー(新陳代謝)を促進し、古い角質がたまって毛穴が詰まるのを防ぎます。
抗炎症作用でニキビの赤みを軽減する
イソトレチノインには抗炎症作用があり、炎症性サイトカインを減少させ、免疫反応を正常化します。ニキビの炎症を早期に抑制することで、赤みや腫れを軽減し、皮膚へのダメージを最小限に留めます。
アクネ菌の増殖を抑える
イソトレチノインには、毛包の環境を整えて、ニキビの原因菌であるアクネ菌の増殖を抑える作用があります。アクネ菌の数を減少させて、ニキビの発生を予防し、肌の健康を守ります。
イソトレチノインの適応対象
イソトレチノインは、他の治療法で効果が得られなかった重度のニキビや、特定の症状を持つニキビなどに対して使用されます。イソトレチノインが適応される具体的なケースには、次のようなものがあります。
一般的なニキビ治療で効果が得られていない場合
保険治療での過酸化ベンゾイルやアダパレン、抗生物質などの治療で十分な効果が得られない場合に、イソトレチノインによる治療を検討します。
ニキビ痕を伴う重度の炎症性ニキビ
ニキビ痕が残るような重度の炎症性ニキビに対してイソトレチノインは効果的です。皮脂分泌を抑え、炎症を鎮めることで、ニキビ痕を予防しニキビの再発を防ぎます。
慢性膿皮症
慢性膿皮症は、重度のニキビや酒さに似た症状を引き起こす、若い女性などがまれにかかる疾患です。主に顔などに慢性的に膿がたまり、融合性の赤い結節や膿疱が多く生じます。この慢性膿皮症に対して、イソトレチノインの抗炎症作用は非常に効果が高いとされています。
集簇性痤瘡
集簇性痤瘡(しゅうぞくせいざそう)は、複数のニキビが集まったような症状を持つ、最重度のニキビです。面皰(めんぽう)や丘疹、膿疱、嚢腫(のうしゅ)などが無数に生じ、化膿を繰り返して、ケロイドや、赤く盛り上がった傷跡である肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)などを形成するという特徴があります。女性より男性に多くみられ、数年から20年以上にわたって慢性的な症状が続きます。この集簇性痤瘡に対しても、イソトレチノインは有効です。
酒さ
顔に赤みが出る酒さにも、イソトレチノインは有効です。ニキビのような赤いブツブツ(丘疹)ができたり、膿を持ったブツブツ(膿疱)が生じる、丘疹膿疱型(第2度酒さ)の酒さに対する効果が期待できます。
イソトレチノインが適応対象にならない方
イソトレチノインは強力な効果を持つため、特定の条件に該当する方には使用が制限されるケースがあります。下記の方は、イソトレチノインの適応対象になりません。
- 妊娠またはその可能性がある方、授乳中の方
- ビタミンA過剰症の方、ビタミンAでアレルギーを起こしたことがある方
- 肝機能・腎機能障害のある方
- 中性脂肪、コレステロール値の高い方
- 精神疾患 (うつ病、うつ気質など)のある方
- 12歳未満の方
当院のイソトレチノインの薬剤
当院では、イソトレチノインの内服薬として、Recordati社のアクネトレント®を導入しており、10mg錠と20mg錠、40mg錠の3種類を取り揃えています。
イソトレチノインの服用方法と注意点
イソトレチノインを効果的かつ安全性が高く使用するためには、正しい服用方法と注意点を守ることが重要です。
イソトレチノインの服用方法
イソトレチノインによる治療は、1日1錠(20mg)を内服することから開始します。16~24週間、服用を継続することを推奨しています。服用をやめた場合でも、ほとんどのケースでニキビの改善効果は続きますが、ニキビの再発がみられるときは、症状を診ながら服用を再開します。
一般的に食事とともに服用することが推奨されます。イソトレチノインの錠剤は脂溶性であるため、食事と一緒に摂取することで吸収率が向上し、より効果的に働きます。
イソトレチノインの治療期間
治療期間は患者様の体重や症状に応じて異なります。効果が現れるまでには数週間から数ヵ月かかることがありますが、治療を継続することで徐々に肌の状態が改善していきます。累積投与量が120mg/kg以上の場合に再発率が30%に抑えられるというデータがあり、体重60kgの方が0.5mg/kg(1日の内服量が30mg)で服用を開始してその量を維持した場合、累積投与量が120mg/kgに達するまでに約8ヵ月ほどかかります。
イソトレチノイン服用時の注意点
イソトレチノインを服用する際は、下記の点に注意することが大切です。
服用量を守る
服用のタイミングを守る
治療期間を守る
イソトレチノイン治療の流れ
-
- STEP1
- 診察
治療前にニキビの状態などを診察し、過去に受診したニキビ治療の内容や期間、その効果などについて問診します。そのうえでイソトレチノイン治療を適応できると判断でき、血液検査でも問題がなかった場合は、次回のご来院から治療を開始します。
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- STEP2
- 血液検査
イソトレチノインの内服治療では、安全に治療を進めるために、事前に血液検査を受ける必要があります。保険適用外のため、血液検査料として3,000円(税込)がかかります。
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- STEP3
- 治療開始
血液検査の結果に問題がなければ、イソトレチノインを処方し、治療を開始します。内服した当日は安静にしていただき、体調が悪いなどの異常を感じたら、すぐに当院までご連絡ください。
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- STEP4
- 再診
治療を開始してから1ヶ月後、イソトレチノインの効果やニキビの状態を診察するために、再診を受けていただきます。その際に血液検査も実施し、副作用が起きていないかを確認します。
-
- STEP5
- 定期検診
副作用などの問題がなければ、再診後は約3ヵ月ごとの定期検診で診察と血液検査を受けていただきます。
イソトレチノインの費用
メニュー | 金額(税込み) |
---|---|
アクネトレント 10mg 30錠 | 8,500 |
アクネトレント 10mg 30錠(学生価格) | 7,500 |
アクネトレント 20mg 30錠 | 9,000 |
アクネトレント 20mg 30錠(学生価格) | 8,000 |
アクネトレント 40mg 30錠 | 17,000 |
アクネトレント 40mg 30錠(学生価格) | 15,000 |
Q&A
イソトレチノインの効果はいつ頃から実感できますか?
通常、治療を開始してから1〜2ヵ月程度で効果を実感される方が多いです。個人差がありますが、治療を継続することで徐々に肌の状態が改善していきます。初期には一時的にニキビが悪化することがありますが、これは治療が効果を発揮し始めている兆候ですので、ご安心ください。
副作用はありますか?
乾燥や唇の荒れなどが一般的な副作用としてみられます。定期的な診察で副作用の管理を行い、必要に応じて保湿剤などを使用します。その他、肝機能への影響や血中脂質の増加がみられることがあるため、定期的に血液検査を行い、健康状態をチェックします。副作用が強く出る場合は、医師が適切に対応いたしますので、何か気になることがあればすぐにご相談ください。
治療中に気をつけることはありますか?
妊娠中の服用は避けてください。イソトレチノインは胎児に対して深刻な影響を及ぼす可能性があるため、治療中および治療後少なくとも1ヵ月間は避妊が必要です。また、治療中は肌が敏感になるため、強い日差しを避け、日焼け止めを使用することや保湿ケアを十分に行うことが重要です。アルコールの摂取も、肝機能に負担をかける可能性があるため控えていただくことを推奨しています。
注意点・リスク・副作用
- 必ず医師の診察が必要です。
- 18歳未満の場合は保護者の方の同意が必要です。
- イソトレチノインの内服中は日焼けしやすいため、強い日差しや紫外線を避け、日焼け止めを使用するようにしてください。
- イソトレチノインには皮脂分泌を抑える作用があるため、治療中は皮膚が乾燥しやすくなります。十分な保湿ケアを行うようにしてください。
- イソトレチノインの服用期間中に、頭痛や目の乾燥などがみられることがあります。異常を感じた場合はすぐに医師にご相談ください。特に目の乾燥がひどい場合は、人工涙液の使用を検討します。
- 下記の方は、イソトレチノインを服用することはできません。
- ◦ 妊娠またはその可能性がある方、授乳中の方
- ◦ ビタミンA過剰症の方、ビタミンAでアレルギーを起こしたことがある方
- ◦ 肝機能・腎機能障害のある方
- ◦ 中性脂肪、コレステロール値の高い方
- ◦ 精神疾患 (うつ病、うつ気質など)のある方
- ◦ 12歳未満の方
- イソトレチノインについて
イソトレチノインは日本国内において、医薬品医療機器等法上の承認を得ていません。- ・入手経路など
国内の医薬品卸業者より購入しています。 - ・国内の承認薬品などの有無
国内にて承認されている同効の機器・医薬品等はありません。 - ・諸外国における安全性などに係る情報
米国FDAによる承認を受けています。
- ・入手経路など
- (参考文献)
- (監修者情報)
-
小谷 和弘
日本皮膚科学会 皮膚科専門医
厚生労働省指定 麻酔科標榜医
日本内科学会 認定内科医