医療コラム
いま話題の介護脱毛は何歳までに受けるべき? 皮膚科専門医が解説します
「介護脱毛」という言葉を、テレビやSNSで目にする機会が増えてきたと感じている方も多いのではないでしょうか。「将来、自分が介護される側になったときのために、あらかじめアンダーヘアを脱毛しておく」―そんな考え方が、ここ数年で急速に広まってきています。
日本は世界でも類を見ない速さで高齢化が進んでおり、厚生労働省の発表によると、2025年4月時点で要介護・要支援の認定を受けている方は、全国で約723万人にのぼります。誰もが「いつか自分や家族が介護を必要とする側になるかもしれない」という現実と、向き合わなければならない時代になったといえるでしょう。
今回は皮膚科専門医の立場から、介護脱毛の基礎知識と、当院として特にお伝えしたい「早めに始めることの大切さ」について詳しく解説していきます。
目次
「介護脱毛」とはどのような脱毛のことか
介護脱毛とは、将来自分が介護を受ける立場になったときに備えて、あらかじめデリケートゾーン(VIO)のムダ毛を医療脱毛で処理しておくことを指します。もともとは脱毛クリニック業界発祥の呼び方で、2017年頃から大手クリニックが提唱し、メディアでも取り上げられるようになったことで広く知られるようになった言葉です。
排泄や入浴の介助が必要になったとき、アンダーヘアが多いと、どうしても介助する方の負担が大きくなってしまいます。清拭や排泄物の処理がしにくくなるだけでなく、蒸れやすく不衛生になりがちで、皮膚トラブルや感染症のリスクも高まります。そうした「将来の介助のしやすさ」と「ご自身の清潔・快適さ」の両方を見据えて行う脱毛、それが介護脱毛です。
なぜ今、介護脱毛が話題になっているのか
背景にあるのは、やはり日本の少子高齢化という社会構造の変化です。先ほど触れたとおり、要介護・要支援認定者数は年々増加を続けており、介護を担う家族や施設スタッフの負担も大きな社会課題となっています。
そうした中で、「介護する側の負担を少しでも減らしたい」「自分の尊厳を保ちながら介護を受けたい」という思いから、40代・50代のうちに介護脱毛を検討される方が増えてきました。当院に来院される患者様の中にも、ご自身の親御様の介護をきっかけに「自分も将来のために」と相談にいらっしゃるケースが少なくありません。介護の現場をリアルに経験された方ほど、その必要性を実感として語られる傾向があると感じています。
そもそもVIO脱毛とは?初めての方にもわかりやすく解説
介護脱毛と一緒によく使われる「VIO脱毛」という言葉ですが、詳しい内容までご存じない方も多いのではないでしょうか。VIOとは、デリケートゾーンを3つのエリアに分けて呼ぶ際の名称です。

※範囲はイメージです。実際の照射範囲はカウンセリング時にご相談ください。
- Vライン:もっとも外側にあたる、下着や水着からはみ出やすい部分
- Iライン:性器周辺の部分
- Oライン:肛門周辺の部分
この3つのエリアをまとめて脱毛することを「VIO脱毛」と呼びます。VIOは他の部位に比べて毛が太く密集しており、毛周期(毛が生え変わるサイクル)も長めであるため、施術には他の部位よりもやや時間がかかる傾向があります。自己処理では肌を傷つけやすく、埋没毛や色素沈着の原因になることもあるため、医療機関でのレーザー脱毛が安全な方法としておすすめです。
介護脱毛がもたらす3つのメリット
介護脱毛には、主に次の3つのメリットがあるといわれています。
- 介護をする側の身体的・精神的負担の軽減:排泄介助や清拭の際、毛の処理に手間取ることが減り、介助がスムーズになります
- 介護を受ける側の衛生面の向上:毛が少ないことで蒸れにくく、皮膚トラブルや感染症のリスクを下げやすくなります
- ご本人の心理的な安心感:「迷惑をかけたくない」という思いから介護脱毛を選ぶ方も多く、将来への不安を軽減できるという声もよく聞かれます
一方で、介護士の方の中には「脱毛していなくても介助上大きな問題はない」という意見もあり、必要性の感じ方には個人差があることも事実です。ただ、ご自身やご家族の負担を減らせる可能性がある選択肢として、知っておいて損はないでしょう。
「介護脱毛は白髪が出る前に」と考える理由
ここからは、私が診療の中で特にお伝えしたいポイントです。介護脱毛は、思い立ったらできるだけ早く始めていただきたいと考えています。その理由は、医療レーザー脱毛の仕組みそのものにあります。
医療レーザー脱毛は、毛に含まれる黒い色素(メラニン)にレーザーが反応し、発毛組織にダメージを与えることでムダ毛を生えにくくする治療です。裏を返せば、メラニン色素を持たない白髪には、レーザーはまったく反応せず、脱毛効果を得ることができません。
そしてデリケートゾーンの毛も、加齢とともに徐々に白髪化していきます。頭髪にはまだ白髪がなくても、VIOの毛が先に白くなり始める方も珍しくありません。「介護が必要になってから」「定年後、時間ができてから」と先延ばしにしているうちに白髪が増えてしまうと、その部分にはレーザー脱毛の効果が期待できなくなってしまうのです。白髪化してしまった毛に対しては、毛穴一つひとつに針を挿入して処理する「ニードル脱毛」という方法もありますが、施術に時間と回数がかかり、費用面の負担も大きくなりがちです。
「介護脱毛を考えるなら、白髪が生える前に、できるだけ早いタイミングで」というのが、皮膚科専門医としての率直なアドバイスです。40代のうちから将来を見据えて相談にいらっしゃる方が増えているのも、こうした理由からだと感じています。
介護脱毛はいつから、何回くらい通えばいい?
明確な「正解の年齢」があるわけではありませんが、VIOの白髪化が始まる前、目安として40代のうちに始めておくと安心です。もちろん30代や、それ以前から始めていただいても問題ありません。
回数の目安としては、自己処理の頻度がかなり減る状態まで4〜7回程度、毛がほとんど生えてこない状態まで10回以上が一般的な目安とされています。VIOは毛周期が比較的長いため、2〜3か月に1回程度の間隔で通院いただくことが多く、完了までには1年から2年ほどかかることも珍しくありません。「将来のため」に備えるものだからこそ、早めにスタートし、余裕を持って完了させておくことをおすすめしています。
まとめ:将来の自分と、大切な人のためにできること
介護脱毛は、「自分が介護される側になったときに、介護してくれる方の負担を減らしたい」という思いやりから生まれた選択肢です。同時に、ご自身の衛生面や心理的な安心にもつながります。
その一方で、レーザー脱毛には「白髪には効果がない」という明確な限界があります。介護脱毛を検討されているなら、迷っている時間そのものがもったいないというのが正直なところです。ぜひ早めに、専門医のいる医療機関にご相談ください。
海老名皮フ科クリニックでは、皮膚科専門医が責任を持って診療にあたる医療脱毛をご提供しています。VIO脱毛や介護脱毛についてご不安な点がある方は、下記のページもあわせてご覧ください。
- (参考文献)
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厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定)(令和7年4月分)」
※要介護(要支援)認定者数は令和7年(2025年)4月末時点の暫定値(723.0万人)です。
- (執筆者情報)
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小谷 和弘
日本皮膚科学会 皮膚科専門医
厚生労働省指定 麻酔科標榜医
日本内科学会 認定内科医

