医療コラム
ダウンタイムの無い新しい美容治療とは? 皮膚科専門医が解説!
「先生、Netflixの『ダウンタイム』って観ました?」―ここ最近、いろいろな所でこんな会話をすることが一気に増えました。2026年9月17日に配信が始まったNetflixシリーズ「ダウンタイム」は、松岡茉優さんと仲里依紗さんが共演し、美容整形業界の光と闇を描いたドラマです。配信直後から大きな話題となり、「ダウンタイム」という言葉を耳にする機会もぐっと増えました。
ドラマでは、登場人物たちが手術後の腫れや痛み、回復への不安と向き合いながら葛藤する姿が描かれています。観ている分にはスリリングで面白いのですが、「実際に自分が受けるとなると、かなりハードルが高い……」と感じた方も多いのではないでしょうか。
私たちのような美容皮膚科クリニックは、ダウンタイムの無い(ごく少ない)治療を数多く扱っています。今回は皮膚科専門医の立場から、「ダウンタイムの無い新しい美容治療」をご紹介します。
目次
ドラマ「ダウンタイム」が話題に―そもそもダウンタイムとは?
ダウンタイムとは「元の生活に戻るまでの回復期間」
ダウンタイムとは、施術を受けてから腫れや赤み、内出血、かさぶたなどが落ち着き、普段どおりの生活に戻れるまでの期間のことです。もともとは「機械が停止している時間」を意味する言葉ですが、美容医療では「回復期間」という意味で使われています。
Netflixはこのドラマの紹介の中で、ダウンタイムを「サナギが蝶になるまでの大事な時間」になぞらえています。うまい表現ですが、現実のサナギの期間は、仕事を休んだり人に会えなかったりと、けして楽なものではありません。
手術のダウンタイムは想像以上に大変
たとえば、たるみを引き上げる外科手術「フェイスリフト」では、耳の前後などを切開し、皮膚や筋膜を引き上げて余った皮膚を切除します。一般的に腫れや内出血は1〜2週間ほど続き、抜糸までに約1週間、仕上がりが落ち着くまでには数か月かかるとされています。ドラマを観て「あれは大変そう」と感じた感覚は、実はとても正しいのです。
外科手術より「ダウンタイムの無い美容機器」が選ばれる理由
「メスは避けたい」という方がほとんど
診察室で患者様のお話を伺っていると、「できれば手術はしたくない」「周りに気づかれずにキレイになりたい」という方が大多数です。痛みや傷あと、長いダウンタイム―こうしたハードルを避けたいと考えるのは、ごく自然にみられる傾向です。
そうしたニーズに応えるかたちで、この20年ほどの間に大きく進化してきたのが、レーザーや超音波、高周波(RF)などを用いた美容医療機器や、注射による「美容皮膚科治療」です。最近の美容機器の中には、お悩みや状態によっては外科手術に迫る効果が期待できるものも登場してきています。
美容機器・注射治療のメリット
| 比較ポイント | 外科手術(フェイスリフトなど) | 美容機器・注射治療 |
|---|---|---|
| 皮膚の切開 | あり | なし |
| ダウンタイム | 数週間〜数か月 | ほぼ無い〜数日程度 |
| 施術当日のメイク | 不可 | 多くの治療で可能 |
| 麻酔 | 局所麻酔〜全身麻酔 | 不要または麻酔クリーム程度 |
| 仕上がり | 変化が大きい | 自然で、周囲に気づかれにくい |
| 調整のしやすさ | やり直しが難しい | 回数や強さを少しずつ調整できる |
もちろん重度のたるみなど、手術でなければ十分な改善が難しいケースもあります。ただ、「少し若々しくなりたい」「今の状態を保ちたい」という多くの方にとっては、美容機器や注射による治療で十分に満足いく結果が得られることが少なくありません。
たるみ治療:フェイスリフトの代わりに「ハイフ」という選択
たとえば、たるみの外科治療の代表がフェイスリフトだとすれば、ダウンタイムの無いたるみ治療の代表が「ハイフ(HIFU:高密度焦点式超音波)」です。
ハイフは、虫眼鏡で太陽の光を集めるように、超音波のエネルギーを皮膚の奥の一点に集中させる治療です。皮膚表面を傷つけることなく、フェイスリフト手術で引き上げる層と同じ「SMAS(スマス)筋膜」まで熱を届けて組織を引き締め、数か月かけてハリのあるフェイスラインへと導きます。
施術直後に軽い赤みやむくみが出ることはありますが、多くの場合は当日からメイクが可能です。私自身も年に1〜2回ハイフを受けて、効果を実感しています。
しわ治療:皮膚を切り取る代わりに「ボトックス注射」という選択
眉間や目尻、額のしわを外科的に治療しようとすると、皮膚を切除して引き上げる手術が必要になることがあります。しかし、表情によってできるしわの多くは、注射だけで改善を目指せます。それが「ボトックス注射」です。
ボトックス注射は、ボツリヌス菌がつくるタンパク質を精製した薬剤を、しわの原因となる筋肉に少量注射し、筋肉の過剰な動きを穏やかにする治療です。効果は数日〜1週間ほどで現れはじめ、一般的に3〜4か月ほど持続します。施術は10分程度で、すぐにお仕事や家事に戻れる、まさにダウンタイムの無いしわ治療です。
シミもニキビ痕も、ダウンタイムの無い治療で改善を目指せます
シミ治療:保護テープ不要・当日メイクOKの「ピコトリートメント」
従来のシミ取りレーザーは、照射部位がかさぶたになり、1〜2週間ほど保護テープを貼って過ごす必要がありました。当院独自の「ピコトリートメント」は、顔全体に低出力のピコレーザーを当てる「ピコトーニング」と、濃いシミをピンポイントで狙う「ピコスポット」を組み合わせた治療です。保護テープは不要で、施術当日からメイクも可能です。肝斑(かんぱん)がある方も、皮膚科専門医が診断したうえで照射方法を調整して治療できます。
ニキビ痕治療:ダウンタイムの大きい治療が多い中で
ニキビ痕、特にクレーター状の凹みの治療は、ダウンタイムが大きくなりやすい分野です。炭酸ガス(CO2)フラクショナルレーザーや、薬剤で凹みの底を焼く「TCAクロス」、皮膚の下の癒着を針ではがす「サブシジョン」などは、施術後に強い赤みやかさぶた、内出血が出て、1〜2週間ほど人前に出にくくなることもあります。
当院では、日常生活を送りながら続けられる治療を中心にご提案しています。
- ジェネシス(トリートメントレーザー):痛みがほとんどなく、赤みや凹凸、毛穴の改善を目指せます
- フォトブライト(IPL光治療):施術後すぐにメイクが可能で、赤みや色むらをケアします
- ピコフラクショナル:従来のフラクショナルレーザーより痛みやダウンタイムが少なく、クレーターの改善を目指せます
- ケミカルピーリング・ハイドラブースター:肌のターンオーバーを整え、ニキビの再発予防にもつながります
美容はダウンタイムの少ない施術から始めれば十分
美容医療というと、ドラマのように「大きく変わる」ことをイメージされるかもしれません。しかし私は、多くの方にとって美容はまず「ノンダウンタイム」の施術から始めれば十分だと考えています。その理由は3つあります。
1つ目は、日常生活を犠牲にしなくてよいことです。仕事や家事を休まずに続けられるので、効果も積み重なっていきます。
2つ目は、自然な変化であることです。周囲からは「なんだか最近キレイになったね」と言われる程度の、自然な若返りが期待できます。
3つ目は、調整がしやすく、リスクを抑えられることです。肌の反応を見ながら調整できるため、「やりすぎた」という後悔が起こりにくいのです。
なお、「ダウンタイムが無い」といっても、施術直後に軽い赤みやほてりが出ることはあります。多くは数時間〜数日で落ち着きますが、大切な予定の直前は避けるなど、事前にご相談いただければ安心です。
美容にも本気の皮膚科として―新しいたるみ治療機器の導入を検討中
当院は、海老名で長年保険診療を行ってきた皮膚科クリニックですが、美容皮膚科にも本気で取り組んでいます。皮膚科専門医だからこそ、肌の状態を正しく診断したうえで、安全性と効果のバランスを考えた美容治療をご提供できると考えています。
現在当院では、注入治療の拡充に加えて、新しいたるみ治療機器として「ソフウェーブ」の導入を検討しています。ダウンタイムがほぼ無く、たるみの改善が期待できる治療です。
ソフウェーブ(超音波)
独自の超音波技術「SUPERB(スパーブ)」で、真皮(深さ約1.5mm前後)を円柱状に加熱し、コラーゲンの再生を促す治療です。照射する層が浅いため、頬がこけることを心配される痩せ型の方にも向いています。
ソフウェーブはハイフとは作用する層や得意分野が異なるため、組み合わせることで、たるみの原因に合わせた、より細やかな治療が可能になります。導入が決まりましたら、当院のホームページやインスタグラムでお知らせいたします。
まとめ:まずはダウンタイムの無い美容治療から、気軽にはじめましょう
ドラマのような大がかりな手術は、大きな変化をもたらす一方で、ダウンタイムという大きなハードルがあります。しかし美容皮膚科には、ハイフ、ボトックス注射、ピコレーザー、ジェネシスなど、日常生活を送りながら受けられるダウンタイムの無い治療が数多くあります。いきなり手術を考える必要はありません。まずはこうした新しい美容治療から、気軽にはじめてみてください。
「自分にはどの治療が合うのかわからない」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。皮膚科専門医が肌の状態をしっかり診断したうえで、無理のない治療プランをご提案いたします。
- (参考文献)
- (執筆者情報)
-
小谷 和弘
日本皮膚科学会 皮膚科専門医
厚生労働省指定 麻酔科標榜医
日本内科学会 認定内科医

