医療コラム
アトピー性皮膚炎の新薬「イブグリース」とは? 特徴やデュピクセントとの違いについて解説
「ステロイドを何年も塗り続けているのに、症状がなかなか良くならない」「他のクリニックで治療を続けているけれど、長年の皮疹がどうしても改善しない」——アトピー性皮膚炎について、そんなお悩みを抱えたまま当院を受診される患者さんが多くいらっしゃいます。
アトピー性皮膚炎に対しては、保湿とステロイド外用薬を中心としたスキンケアが治療の基本です。しかし、中等症から重症の方では、外用薬だけでは十分なコントロールが難しいケースも多くあります。そうした方々に向けて近年、「生物学的製剤(バイオ製剤)」と呼ばれる注射薬が登場し、アトピー性皮膚炎治療の選択肢は大きく広がりました。
当院では、2026年7月より、アトピー性皮膚炎に対する新しい生物学的製剤「イブグリース(レブリキズマブ)」の処方を開始します。今回は、この薬の特徴と、すでに当院でも処方しているデュピクセントとの違い、そして当院での治療方針についてご説明します。
目次
アトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤(バイオ製剤)とは
生物学的製剤(バイオ製剤)とは、体内で炎症を引き起こす特定のタンパク質(サイトカイン)を狙い打ちにする注射薬です。アトピー性皮膚炎では、IL-4やIL-13といったサイトカインが皮膚の炎症を悪化させることがわかっており、これらをブロックすることで、従来の外用薬では得られなかった高い治療効果が期待できます。
バイオ製剤は全身への影響が少なく安全性が高い一方で、費用が比較的高いこと、皮下注射が必要なこと、そして処方できる施設が限られていることが特徴です。当院では以前よりデュピクセント(デュピルマブ)を処方してきましたが、この度イブグリースの取り扱いも開始することで、患者さん一人ひとりの状況に合わせた提案がよりしやすくなります。
イブグリース(レブリキズマブ)の特徴
イブグリース(一般名:レブリキズマブ)は、IL-13に結合し、その働きをブロックするモノクローナル抗体です。2024年に日本でも発売が開始された比較的新しい薬剤で、以下のような特徴があります。
12歳以上から使用できる
これまでの一部のバイオ製剤では成人のみが対象でしたが、イブグリースは12歳以上(体重40kg以上)から使用が可能です。思春期に入ってもアトピー性皮膚炎が続いているお子さんにも、新たな選択肢として提案できるようになりました。
副作用がほとんどなく、安全性が高い
イブグリースはIL-13のみをターゲットとするため、免疫全体を抑えるわけではなく、感染リスクや臓器への負担が非常に少ない薬剤です。主な副作用は注射部位の一時的な反応や軽度の結膜炎などにとどまり、長期使用における安全性も臨床試験で確認されています。副作用を心配してバイオ製剤を敬遠していた方にも、選択肢として検討していただきやすい薬だと思います。
治療効果が非常に高い
臨床試験では、長年の頑固な皮疹が大きく改善したという報告が多くあります。「どんな薬を試しても治らなかった」という重症の方でも、バイオ製剤の登場で見違えるほど肌の状態が改善するケースは珍しくありません。諦める前に、ぜひご相談ください。
イブグリースとデュピクセントはどう違うのか
当院でこれまで処方してきたデュピクセント(デュピルマブ)も、非常に優れた生物学的製剤です。ただ、イブグリースとはいくつかの点で違いがあります。
| デュピクセント | イブグリース | |
|---|---|---|
| 注射の頻度 | 2週間に1回 | 初期のみ2週間に1回 以降は4週間に1回も可 |
| 最小適応年齢 | 生後6ヶ月以上 | 12歳以上(40kg以上) |
| 対応疾患 | アトピー・喘息・鼻茸など | アトピー性皮膚炎 |
| 薬剤費の目安 | やや高め | 抑えやすい |
最も大きな違いは注射の頻度です。デュピクセントは2週間に1回の皮下注射が基本ですが、イブグリースは導入時の初期投与(2回)を終えた後、症状が安定してきた段階で4週間に1回(月1回)に減らすことができます。お仕事や育児が忙しく、通院の負担を少しでも減らしたいという方にとっては、この違いは小さくありません。
また、薬剤費についても、デュピクセントと比べてイブグリースの方が抑えやすい場合があります。これはデュピクセントが喘息や慢性副鼻腔炎(鼻茸)など複数の疾患に適応を持つ一方、イブグリースはアトピー性皮膚炎に特化した薬剤であることなどが背景にあります。
一方で、デュピクセントには独自の強みがあります。適応年齢の下限が生後6ヶ月と低く、小さなお子さんにも使用できること、そして喘息や慢性副鼻腔炎(鼻茸)など、アトピー以外のアレルギー疾患も合わせてお持ちの方にはデュピクセントが特に有効です。こうした方には引き続きデュピクセントを中心にご提案していきます。
いずれの薬剤が合っているかは、年齢・症状の程度・他のアレルギー疾患の有無・生活スタイルなどによって異なります。受診の際にじっくりお話を聞いたうえで、最適な薬剤を一緒に考えていきましょう。
JAK阻害剤を当院では導入しない理由
アトピー性皮膚炎の画期的な治療薬として「JAK阻害剤」と呼ばれる内服薬も近年使用され始めています。しかし当院では、副作用リスクの観点から、JAK阻害剤の導入は行っておりません。
JAK阻害剤は免疫全体を広く抑える作用を持つため、重篤な感染症、血栓症、悪性腫瘍などのリスクが指摘されており、使用にあたっては慎重な患者選択と継続的な管理が必要な薬剤です。生物学的製剤と比べると、対象を絞った作用とは言えず、特にリスクの高い方への使用には慎重であるべきだと判断しています。そのため当院では、安全性を重視し、バイオ製剤(生物学的製剤)を中心とした治療を行っています。
イブグリースを処方できる施設は限られています
イブグリースをはじめとするアトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤は、専門的な皮膚科診療体制が整っていると認められた医療機関でのみ処方が可能です。処方にあたっては所定の要件を満たしている必要があり、どのクリニックでも使える薬ではありません。
当院はその要件を満たした医師が在籍する施設です。海老名市はもちろん、厚木市・大和市・綾瀬市・座間市など近隣にお住まいで、アトピー性皮膚炎のバイオ製剤治療をご検討されている方は、ぜひ当院へご相談ください。
まとめ:アトピー性皮膚炎でお悩みの方へ
アトピー性皮膚炎は、正しい治療と丁寧なスキンケアを続けることで、症状を十分にコントロールできる疾患です。「長年の皮疹が生物学的製剤(バイオ製剤)でここまで改善するとは思わなかった」とおっしゃる患者さんの声を、私も診察の中でたびたび聞いています。
当院では2026年7月より、デュピクセントに加えてイブグリースの処方も開始します。外用薬だけでは改善が難しかった方、他院での治療がうまくいっていない方、初めてバイオ製剤を検討している方も、ぜひ一度ご相談くださいませ。
- (参考文献)
- (執筆者情報)
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小谷 和弘
日本皮膚科学会 皮膚科専門医
厚生労働省指定 麻酔科標榜医
日本内科学会 認定内科医

