医療コラム

水虫は市販薬だけで本当に治せる?成分と選び方の注意点について解説

ドラッグストアに行くと、実にさまざまな水虫の薬が並んでいます。「とりあえず市販薬を試してみよう」という方も多いのではないでしょうか。しかし、市販薬(OTC医薬品)の中には、水虫を治すこと自体には関係のない成分が数多く配合されている製品もあり、正しい知識がないまま使い続けると、かえって肌トラブルを招くこともあります。

本コラムでは、水虫治療の基本から、代表的な市販薬の成分比較、そして当院が市販薬に頼りきることをおすすめしない理由まで、詳しく解説します。

目次

水虫治療の基本は「抗真菌成分」

水虫は白癬菌という真菌(カビの仲間)による感染症のため、治療の基本は抗真菌成分を含む薬を使い、白癬菌を殺菌・除菌することです。これは市販薬・処方薬を問わず共通する治療の原則です。

水虫の市販薬に含まれる代表的な抗真菌成分

水虫用の市販薬に配合される抗真菌成分には、主に次のようなものがあります。いずれも白癬菌に対して有効性が確認されている成分です。

  • テルビナフィン:白癬菌に対する殺菌作用が強く、多くの市販薬で採用されている成分です。
  • ブテナフィン:角質層への浸透性が高く、白癬菌によく効く一方、カンジダなど他の真菌には、やや効果が及びにくい特徴があります。
  • ラノコナゾール:殺菌力と患部への貯留性に優れ、1日1回の使用で効果を発揮するとされる成分です。

これらの抗真菌成分そのものは、正しく使えば市販薬でも一定の効果が期待できます。問題となるのは、この後にご説明する「追加で配合されている成分」です。

有名な水虫の市販薬(OTC)の成分比較

ドラッグストアでよく見かける代表的な水虫薬を、「抗真菌薬」「かゆみ止め」「局所麻酔」「抗炎症」「殺菌」「清涼感」の6つの機能に分けて整理すると、以下のようになります。

商品名(販売元) 抗真菌薬 かゆみ止め 局所麻酔 抗炎症 抗菌(細菌) 清涼感
ラミシールAT
(グラクソ・
スミスクライン)
テルビナフィン なし なし なし なし なし
ダマリングランデX
(大正製薬)
テルビナフィン なし リドカイン グリチルレチン酸 イソプロピルメチル
フェノール
l-メントール
メンソレータムエクシブEX
(ロート製薬)
テルビナフィン クロタミトン
クロルフェニ
ラミン
リドカイン グリチルレチン酸 イソプロピルメチル
フェノール
(液剤のみ)
l-メントール
ブテナロックVα
(久光製薬)
ブテナフィン クロタミトン ジブカイン グリチルレチン酸 イソプロピルメチル
フェノール
l-メントール
ピロエースZ
(第一三共ヘルスケア)
ラノコナゾール クロタミトン なし グリチルレチン酸 イソプロピルメチル
フェノール
l-メントール

① ラミシールAT(グラクソ・スミスクライン)

有効成分はテルビナフィンのみです。かゆみ止めや麻酔成分といった余計な成分を加えていない、シンプルな処方が特徴です。メーカー自身も「テルビナフィン単剤」であることを製品の特徴として打ち出しています。

② ダマリングランデX(大正製薬)

テルビナフィンに加えて、局所麻酔成分のリドカイン、清涼感成分のl-メントール、抗炎症成分のグリチルレチン酸、さらに殺菌成分のイソプロピルメチルフェノールが配合されています。

③ メンソレータムエクシブEX(ロート製薬)

テルビナフィンに加え、かゆみ止め成分のクロタミトン・クロルフェニラミン、局所麻酔成分のリドカイン、抗炎症成分のグリチルレチン酸、殺菌成分のイソプロピルメチルフェノールが配合されています。剤型が液剤の場合は、これらに加えて清涼感成分のl-メントールも配合されており、今回ご紹介した製品の中でもっとも配合成分の多い製品のひとつです。

④ ブテナロックVα(久光製薬)

ブテナフィンに加えて、かゆみ止め成分のクロタミトン、局所麻酔成分のジブカイン、清涼感成分のl-メントール、抗炎症成分のグリチルレチン酸、殺菌成分のイソプロピルメチルフェノールが配合されています。

⑤ ピロエースZ(第一三共ヘルスケア)

ラノコナゾールに加えて、かゆみ止め成分のクロタミトン、抗炎症成分のグリチルレチン酸、清涼感成分のl-メントール、殺菌成分のイソプロピルメチルフェノールが配合されています。局所麻酔成分は含まれていません。

要注意:かゆみ止め・清涼感成分が皮膚炎の原因に

水虫の治療そのものに、局所麻酔成分や清涼感を与える成分は必要ありません。それどころか、こうした余分な成分が肌への刺激となり、かぶれ(接触性皮膚炎)を引き起こすことがあります。かゆみが強くなった、赤みが増した、といった変化を「水虫が悪化した」と思い込み、さらに市販薬を塗り重ねてしまうケースも少なくありません。当院でも、こうした余分な成分が配合された市販薬については積極的におすすめしておりません。

かゆみ止め成分や清涼感成分は、あくまで一時的に不快感を和らげるためのものです。水虫のつらいかゆみをすぐに抑えたいという気持ちは自然なことですが、治療の本質は白癬菌を除去することにあります。可能であれば、ラミシールATのように抗真菌成分のみを配合したシンプルな製品を選ぶか、皮膚科を受診して自分の肌状態に合った薬を処方してもらうことをおすすめします。

水虫の市販薬を使ううえでのそのほかの注意点

市販薬で自己治療をする際には、成分以外にも気をつけたい点があります。見た目やかゆみが改善したからといって、すぐに使用をやめてしまうのは要注意です。皮膚の奥にはまだ白癬菌が残っていることが多く、途中でやめてしまうと再発を繰り返す原因になります。症状が気にならなくなった後も、1ヵ月程度は塗り続けることが根治への近道です。

また、外用薬は市販薬であっても処方薬であっても、入浴後、皮膚がやわらかくなったタイミングで、症状のある部分だけでなく足の裏全体・足の側面・指の間まで広く塗ることも、効果を高めるポイントです。

水虫の市販薬で対応できないケース・皮膚科を受診すべき症状

以下のような場合は、市販薬に頼らず皮膚科を受診することをおすすめします。

  • 水虫の診断を受けたことが一度もない(自己判断のみで使用している)
  • 市販薬を1ヵ月程度使っても改善が見られない
  • 症状の範囲が広い、またはかえって悪化している
  • 糖尿病など持病があり、感染症が重症化しやすい
  • 爪の変色・変形がある(爪水虫の疑い)

水虫はありふれた病気である一方、正確な診断には顕微鏡による検査(直接鏡検)が必要です。「市販薬を使い続けても治らない」という患者様の中には、そもそも水虫ではなかったというケースも少なくありません。自己判断に限界を感じたら、早めに皮膚科専門医へご相談ください。

より詳しい当院の水虫・爪水虫治療について

爪水虫(爪白癬)は市販薬では治せない

爪が白っぽく濁ったり、厚く崩れやすくなったりしている場合は、爪白癬の可能性があります。爪は薬剤が浸透しにくい構造をしているため、市販の外用薬では十分な効果が得られにくく、内服薬(飲み薬)による治療が基本となります。内服薬は、定期的な血液検査(肝機能の確認)を行いながら、医師の管理のもとで使用する必要があるため、皮膚科を受診したうえでの治療が推奨されます。

まとめ——水虫の市販薬は正しく理解したうえで、迷ったら皮膚科へ

市販の水虫薬は、抗真菌成分そのものは正しく使えば一定の効果が期待できます。一方で、局所麻酔成分や清涼感成分など、治療に直接関係のない成分による肌トラブル、自己判断による治療の中断・再発など、注意すべき点も少なくありません。

「市販薬を使ってもなかなか治らない」「かえって症状が悪化した気がする」「そもそも水虫かどうか分からない」という場合は、早めに皮膚科専門医にご相談ください。海老名皮フ科クリニックでは、正確な診断のもと、患者様一人ひとりに合った治療をご提案しております。


(執筆者情報)

小谷 和弘

日本皮膚科学会 皮膚科専門医

厚生労働省指定 麻酔科標榜医

日本内科学会 認定内科医

皮膚科・小児皮膚科・美容皮膚科・アレルギー科

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