アトピー性皮膚炎

当院のアトピー性皮膚炎治療の特長

  • 当院では、ナローバンドUVB療法エキシマレーザーを用いた新しい紫外線治療を実施し、皮膚へのダメージを抑えながら効果的に症状を改善します。
  • デュピクセントやミチーガなどの抗体治療薬も使用し、重症のアトピー性皮膚炎に優れた効果を発揮しています。
  • 症状や生活スタイルに応じた治療プランを作成し、内服薬や外用薬、光治療などを最適に組み合わせて治療しています。
  • 経験豊富な医師とスタッフが、日々進歩するアトピー治療の勉強を怠らずに継続し、不安や疑問にも丁寧に対応しながら、安心して治療を受けられる環境を整えています。

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは、かゆみを伴う湿疹や皮膚の炎症が、慢性的に軽減と悪化を長期間にわたって繰り返す疾患です。皮膚の乾燥とバリア機能の低下を伴い、外界からのさまざまな物質による刺激やアレルギー反応が加わることで発症します。

日本皮膚科学会では、「かゆみ」「特徴的な皮疹と分布」「慢性・反復性の経過」の3つすべてに当てはまることをアトピー性皮膚炎の診断基準にしています。

アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎の症状は発症する時期により、3つの型に分類されます。

乳児期

生後数ヵ月から湿疹がみられます。主に口まわり頭部髪の生え際にジクジクした湿潤型の湿疹が生じ、他に首まわりや背中、おむつまわりにも症状が出ることがあります。離乳食開始期にあたる生後6ヵ月頃に湿疹がピークとなることが多く、それを過ぎると改善していき、1歳頃になると顔面の湿疹が徐々に消失します。1歳半~2歳頃に症状がいったん落ち着く場合が多いです。

幼児期・学童期

膝の関節の内側首まわりなどを中心に湿疹が生じ、全身の乾燥が始まります。耳のつけ根が切れて赤くカサカサする症状(耳切れ)がみられることもあります。食物アレルギーが関与している場合があります。最も多いタイプのアトピー性皮膚炎です。

思春期・成人期

乳児期や幼児期にいったんアトピー性皮膚炎が落ち着いていた方が20歳前後から悪化したり、乳幼児の頃には症状がなかった方が20歳を超えてから発症したりします。成人の場合は食物アレルギーが関与することはほとんどありませんが、花粉ハウスダストダニなどのアレルギーが原因で増悪することがあります。学童期以前の湿潤型の湿疹とは違い、思春期以降は身体の広範囲にわたって乾燥型の皮膚炎を起こします。頭皮に大量のフケが出る場合も多いです。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎には、アトピー素因や皮膚のバリア機能の低下、環境要因などの原因が複合的に関与しています。

アトピー素因

アトピー性皮膚炎の患者さんの多くがアトピー素因を持ちます。アトピー素因とは、両親のどちらかが気管支喘息アレルギー性鼻炎結膜炎アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を持っていたり、身体がアレルギー反応に関与するIgE抗体を作りやすい体質であったりすることをいいます。IgE抗体は皮膚の炎症やかゆみの原因になります。

皮膚のバリア機能の低下

皮膚の一番外側にある角層は、外からの異物の侵入や水分の蒸発による皮膚の乾燥を防ぐ機能を持っています。アトピー性皮膚炎の患者さんはこの角層の主成分であるセラミドが少ないため、角層の機能異常によって皮膚のバリア機能と水分を保持する能力が低下してしまい、外からの異物が容易に皮膚の中まで入りやすくなったり乾燥肌になったりします。乾燥肌を放っておくと湿疹やかゆみが悪化してしまうため、皮膚の保湿が重要になります。

環境要因

前述したように、アトピー性皮膚炎の患者さんは乾燥肌のため、外からの刺激が皮膚の内部に到達しやすくなっています。そして、それらの刺激をもたらすさまざまな環境要因が、アトピー性皮膚炎の原因の一つになっているといわれています。患者さんの年齢によっても異なりますが、ダニハウスダスト食物乾燥掻破(かくこと)物理化学的刺激ストレスなどが環境要因になると知られています。

アトピー性皮膚炎の検査

当院では、アトピー素因を調べたり、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させる環境要因を特定したりするため、39項目のアレルギー検査が一度の採血で行えるView39」という血液検査を提供しています。アレルギー症状があると医師が認めた場合は保険が適用される、とても人気のある検査です。

アレルギー検査について

アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎の治療では、外用薬や内服薬、光線治療や抗体療法などが用いられます。

外用薬

アトピー性皮膚炎の治療で使用される外用薬には、下記のようなものがあります。

ステロイド

ステロイドは、アトピー性皮膚炎の治療のメインとなる外用薬です。外用には、症状が悪化している場合にのみ塗る「リアクティブ療法」と、ステロイドの強さを段々と弱いものに変えていき最終的には予防のために週に1~2回塗る、あるいは徐々に塗る回数を減らして外用する間隔を延ばしていく「プロアクティブ療法」があります。当院では、症状の経過をみて、適切な方法をご提案しています。まれに副作用として、皮膚が薄くなることや毛細血管が拡張して赤みが生じることがあります。

タクロリムス

タクロリムスは、アレルギーの免疫反応を抑制する抗炎症作用により、アトピー性皮膚炎の赤みやかゆみを抑えます。ステロイドと違い、皮膚を薄くしたり毛細血管を拡張したりする副作用がないため、予防目的でも長期的に使用できます。ステロイドの外用による副作用が生じやすい、皮膚が薄い顔や首などにも使いやすい外用薬です。またタクロリムスはステロイドよりも分子量が大きく、正常なバリア機能を持った健康な皮膚からはほとんど体内に吸収されないため、全身性の副作用を起こすこともほとんどありません。ただし、炎症が強い場合に使用するとヒリヒリした刺激感があるため、維持期に向いているといえます。

JAK阻害薬

炎症反応を引き起こす化学伝達物質の一つに炎症性サイトカインがあります。アトピー性皮膚炎などのアレルギー反応が関わる病気では、炎症性サイトカインが大きな役割を果たしています。特にインターロイキン(IL)は主要な炎症性サイトカインの一つで、ILの情報を伝達するためにはヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素が必要です。JAK阻害薬は、JAKへの阻害作用によって、ILなどの炎症性サイトカインのシグナル伝達を妨げます。その結果、サイトカインによって引き起こされる免疫細胞や炎症細胞の活性化を抑え、皮膚の炎症を軽減します。また、サイトカインによって引き起こされるかゆみなどを抑制する効果も期待できます。

内服薬

重症のアトピー性皮膚炎の場合などで、外用治療の効果がみられない場合に、内服薬を併用することがあります。

抗アレルギー薬

抗アレルギー薬は、アトピー性皮膚炎によるかゆみを抑えるために補助的に内服します。長期間でも安全に使用できます。また寝ている間は副交感神経が優位になるためかゆみが強くなり、就寝中に患部を掻き壊して悪化させてしまうことがありますが、抗アレルギー薬を服用することでこれを防ぐことができます。副作用はほとんどありませんが、日中に眠くなる場合は、抗アレルギー薬の種類を変えて患者さんに適したものを見つけ出します。

シクロスポリン

シクロスポリンは、乾癬やアトピー性皮膚炎、自己免疫疾患など、免疫の調整がうまく働かないことによって起こる皮膚炎疾患などに使用されます。シクロスポリンを使えるのは、既存の治療でコントロールできない成人の最重症・難治症例で、断続的に使用を繰り返すことは可能ですが、使用を開始・再開してから3ヵ月以内に休薬することが求められています。治療効果は高いのですが、高血圧や腎機能障害を引き起こすことがあるため、定期的な血圧測定と血液検査が必要です。

ステロイド内服

アトピー性皮膚炎の症状を一時的に緩和するために、ステロイドを外用ではなく内服することがあります。強い効果を発揮しますが、ステロイドは長期間にわたって内服すると感染症や糖尿病、骨粗しょう症、不眠症などの副作用をもたらす可能性があるため、長期的に連続して服用することはありません。

JAK阻害薬内服

JAK阻害薬を内服することで、皮膚の過剰な免疫反応を抑え、皮膚の炎症を抑制して、アトピー性皮膚炎の症状を改善します。中等症以上のアトピー性皮膚炎で、ステロイドやタクロリムスの外用などによる治療を6ヵ月以上行っても十分な効果が得られなかった方が適応となります。

光線療法(紫外線治療)

光線療法は、ステロイドなどの外用薬のみでは効果が得られないときに外用薬と併用するアトピー性皮膚炎の治療方法です。腎障害や肝障害があって、内服薬による治療が行えない場合などでも選択できる安全性の高い治療です。光線療法を併用することで、ステロイド外用薬の量を減らせるというメリットもあります。

ナローバンドUVB

ナローバンドUVBは、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬、掌蹠膿疱症、円形脱毛症、尋常性白斑など、難治性の皮膚疾患に対して有効な保険適用の光線療法です。紫外線の1種であるUVBの中でも、皮膚疾患に効果が認められている311~313ナノメートルという幅の狭い波長(ナローバンド)だけを照射するため、紫外線による光老化などの副作用を大幅に抑えることができ、小児や妊婦の方でも安心して治療を受けられます。当院では、全身型ナローバンドUVB照射器を完備しています。

ナローバンドUVBについて

エキシマライト

エキシマライトによる光線療法では、ナローバンドUVBが311~313ナノメートルという波長領域の紫外線を照射するのに対して、より治療効果が高い308ナノメートルの紫外線のみを患部に向けてピンポイントかつ強力に照射でき、患部だけを安全かつ効果的に治療することが可能です。アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の治療において、他の治療法と併用することで、より高い治療効果が期待できます。

当院ではそのエキシマライトの進化版で、輝度が約55万倍に向上し、照射時間も3秒から0.5秒と短縮されたエキシマレーザーを用いる「XTRAC」を導入しています。従来のエキシマライトと比べて、照射面積が小さいため無駄な照射がなく、余分な波長がないため色素沈着や紅斑反応を抑えることが可能です。目の内側や指の間などの狭い部位にも照射できます。エキシマレーザーは、アトピー性皮膚炎に対して保険が適用されます。

エキシマレーザーについて

抗体療法

抗体療法は、これまでに解説した治療方法で効果がみられない場合に検討されます。従来の治療方法は皮膚のバリア機能が低下したり、炎症反応が進んだりした症状を外用薬や内服薬で抑制するための治療ですが、抗体療法は炎症が引き起こされる仕組みを根本から抑制する治療です。

デュピクセント

デュピクセントは皮下注射で使用する注射薬です。アトピー性皮膚炎には、炎症性サイトカインと呼ばれる物質が関与しています。デュピクセントは、アトピー性皮膚炎の病態の中心的な要因であるサイトカインIL-4、IL-13両方の働きをブロックすることで、皮膚の炎症やかゆみを抑え、アトピー性皮膚炎の症状を改善します。効果と安全性は高いのですが、費用が高額になります。

保湿

アトピー性皮膚炎の治療では、症状があるときだけでなく、症状が落ち着いているときでも日常的に保湿を行い、皮膚を乾燥から守ることが重要です。保湿剤によるスキンケアをしっかりと行い、皮膚のバリア機能を保持するようにしましょう。


(参考文献)

日本皮膚科学会 「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021」

アトピー性皮膚炎の病態と治療の最前線

(監修者情報)

小谷 和弘

日本皮膚科学会 皮膚科専門医

厚生労働省指定 麻酔科標榜医

日本内科学会 認定内科医

皮膚科・小児皮膚科・美容皮膚科・アレルギー科

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