医療コラム
イソトレチノインをオンライン診療で処方しても大丈夫?知っておきたい重大リスクとは
「イソトレチノインはニキビにとてもよく効く」。このことが世間にも知られるようになり、オンライン診療で処方するクリニックも増えています。しかしそのなかには、診察体制や安全管理の面で強い疑問を感じるケースも見受けられます。今回は皮膚科専門医として、この薬剤とオンライン診療の相性についてお伝えします。
なお、私はオンライン診療そのものを否定しているわけではありません。慢性疾患の継続処方など有効に活用できる場面は多くありますが、イソトレチノインのように定期的な血液検査や副作用評価が重要な薬剤については、対面診療を基本とした慎重な管理が望ましいと考えています。
目次
イソトレチノインとはどんな薬か—アメリカでの位置づけ
イソトレチノインはビタミンA誘導体の内服薬で、皮脂腺の働きを抑えて皮脂の分泌を抑制することで、重症・難治性のニキビに高い効果を発揮します。アメリカでは40年以上前にFDA(食品医薬品局)の承認を受けた薬ですが、同時に極めて厳格な安全管理が求められている薬でもあります。代表的な制度が「iPLEDGE」で、処方できる医師・薬剤師は登録制、妊娠可能な女性には毎月の妊娠検査が義務付けられています。これは、イソトレチノインに胎児の耳・目・脳・心臓などに重い先天異常を引き起こす催奇形性があるためです。日本でも、厚生労働省が個人輸入によるイソトレチノインの入手について、重篤な副作用のリスクを理由に注意喚起を行っています。
つまりイソトレチノインは、「効果が高いから気軽に販売してよい薬」ではなく、承認国であるアメリカでさえ、処方できる医師を限定し、慎重な検査を重ねながら管理することが前提とされている薬なのです。
「効く」ことと「誰でも簡単に出してよい」は別問題
イソトレチノインには催奇形性のほか、肝機能障害、血中コレステロールの上昇、皮膚や粘膜の激しい乾燥、まれにうつ症状などの副作用があり、診察のたびに医師がこれらを確認し、服用量の調整や中止を判断する必要があります。しかし、オンライン診療では患者様とのやり取りが数十秒程度に収まるケースが多く、その間にこれらの対応が本当に十分になされているのか、疑問を感じることがあります。場合によっては、対応している人物が本当に皮膚科の専門的トレーニングを受けた医師なのか、患者様側からは判断がつかないケースも見受けられるようで、この点は改善すべきであると考えています。
オンライン診療の実態—十分な診察と言えるのか
自費診療のオンラインクリニックの中には、実際のやり取りの多くを、医師以外の医療資格を持たないスタッフがマニュアルに沿って行い、医師が関わるのは最後の数秒〜数分の確認だけ、という運営形態も見られます。これで、医師法が本来想定している「医師による診察」として十分と言えるのでしょうか。特にアメリカでは厳格に処方が管理されているイソトレチノインという薬剤においても、こうした運営形態が広がりつつあることには注意する必要があります。
「イソトレチノインの採血は別のクリニックで」という診療体制の課題
イソトレチノインの内服治療では、肝機能や血中脂質の異常を確認するため、治療前後の定期的な血液検査が欠かせません。ところが最近では、「採血だけは近くの別のクリニックで受けてください」と案内するクリニックも出てきているようです。実際に複数の皮膚科医療機関で、そうした案内を受けた患者様の来院が見られ、課題として認識され始めています。これは、手間とコストのかかる部分を他院に委ね、自院では薬の処方だけを行う体制とも言え、処方した薬の安全性を自ら確認するという責任の観点からは、もはや診察しているとは言い難いと感じます。
マンジャロ問題と同じ構造—自由診療ビジネスのゆがみ
こうした構図は、当院が別のコラムでも取り上げた「マンジャロ(糖尿病薬)を痩せる注射として打つことの危うさ」という問題と、根本的に同じ構造です。効果の高い薬が話題になり需要が生まれると、本来必要な診察や検査を簡略化してでも薬だけを売りさばこうとする自由診療クリニックが参入します。イソトレチノインについても、いずれマンジャロと同じように、大きな副作用被害が生じたりして、社会問題としてクローズアップされる日が来るのではないかと、私は危惧しています。
自由診療だからこそ、適切なルール作りが求められる
近年の日本においては、自由診療(自費診療)クリニックに対する国の取り締まりが、十分に追いついていない印象があります。しかし、保険診療であっても自由診療であっても、医師でなければ行うことができない「医療行為」であることに変わりはありません。医師は国家試験に合格し、国から認められた専門職である以上、たとえ自由診療であっても、その活動をしっかりと監視する仕組みが必要です。医師という肩書きが、収益を優先するビジネス志向の運営会社に利用され、医療倫理という観点が置き去りにされてしまっているケースが、多く見受けられます。患者様の安全を守るためにも、早急な制度の整備が期待されます。
当院のイソトレチノイン治療について
当院には、5名以上の皮膚科専門医が在籍しており、いずれの方もイソトレチノイン治療の経験が豊富です。治療前後の診察・血液検査を通じて、副作用への対処や服用量の増減、中止・再開の判断まで、すべて医師が責任を持って行っています。個人輸入は安全面から推奨できませんが、「採血のフォローだけお願いしたい」というご相談も増えており、今後の対応についてルールを定めているところです。
当院では、診察・血液検査・副作用の確認・服薬指導までを含めた一連の治療としてイソトレチノイン治療を提供しているため、薬だけを処方する医療機関とは当然ながら料金体系が異なります。実際、専門的なアドバイスを受けずに自己判断で服用している方の中には、40mgという高用量でもなかなか改善が見られないケースがあり、服用タイミングなど、量だけでは測れない知識と経験とコツが治療の成否を左右することも少なくありません。
横浜・川崎など神奈川全域からご来院いただくイソトレチノイン治療
当院では、海老名エリアからだけでなく、横浜・川崎をはじめ、藤沢・厚木・座間や相模原など神奈川全域からイソトレチノイン(アクネトレント)による治療を希望される患者様にご来院いただいています。
イソトレチノイン治療では、初回の診察と血液検査に加え、服用を開始された後も約3ヶ月に1回程度の定期的な採血が必要です。そのため、治療内容だけでなく、継続して通院しやすいクリニックを選ぶことも大切です。
横浜駅から乗り換えなし
横浜駅から海老名駅までは、相鉄本線の特急や快速などを利用して約30分です。海老名駅から当院までは徒歩約5分のため、横浜や川崎市内、相鉄線沿線にお住まいの方にも通院していただきやすい立地です。
提携駐車場や安価なコインパーキングが充実
海老名皮フ科クリニックに専用駐車場はありませんが、周辺に約12か所のコインパーキングがあり、お車でも便利にご来院いただけます。100台近く収容できる大型駐車場もあり、満車でお困りになることはほとんどありません。
また、当院は大型商業施設「ららぽーと海老名」の向かいにあり、1,800台収容の駐車場とも提携しています。お買い物やお食事とあわせてご利用いただけます。
イソトレチノインの効果を最適化するための治療方針
また、ニキビ治療はイソトレチノインを内服して終わりではありません。イソトレチノインは新たな炎症性ニキビを防ぐ薬であり、すでにできた凹凸や色素沈着などのニキビ痕そのものを治す薬ではなく、レーザーやピーリングなど別のアプローチが必要です。薬だけを処方するオンラインクリニックでは、この「その後」までフォローすることは難しく、結局満足のいく結果に至っていない方がかなり多いように思われます。当院では、内服治療からニキビ痕への対応まで、医師が経過を把握しながら連続的に診療しています。
イソトレチノインは、正しく使えば重症ニキビの方にとって大きな助けとなる薬です。だからこそ、診察・検査・経過観察、そしてニキビ痕のケアまでを含めた医療の基本を守りながら、安全に治療を届けていくことが何よりも重要だと考えています。
- (参考文献)
- (執筆者情報)
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小谷 和弘
日本皮膚科学会 皮膚科専門医
厚生労働省指定 麻酔科標榜医
日本内科学会 認定内科医

