医療コラム
アレルギー体質を改善する舌下免疫療法とは?効果や期間、ステロイド注射との違いを解説
毎年つらい花粉症や慢性的な鼻炎に悩まされ、「薬を飲んでも完全には楽にならない」「毎年この時期が憂うつ…」と感じている方も多いのではないでしょうか。
近年、たんに症状を抑えるだけではなく、“アレルギー体質そのものの改善”を目指す治療として、「舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)」が注目されています。
舌下免疫療法は、スギ花粉やダニに対するアレルギー反応を少しずつ起こしにくくしていく治療法で、継続することで症状の軽減や、お薬の使用量減少が期待できます。
今回は、舌下免疫療法の仕組みや治療方法、効果が出るまでの期間、注意点、さらに最近話題になることもある「花粉症注射」との違いについても、わかりやすくご説明します。
目次
舌下免疫療法とは
5月から、スギ・ダニアレルギーに対する「舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)」の新規導入が、当院でも始まっています。
毎年2~4月になると、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみで悩まされ、「春が本当に憂うつ…」という方も多いのではないでしょうか。
花粉症というと、「薬で症状を抑えるしかない」と思われがちですが、実は現在、花粉症そのものの体質改善を目指せる治療法があります。それが「舌下免疫療法」です。
舌下免疫療法は、スギ花粉やダニの成分を少量ずつ毎日体に取り入れることで、アレルギー反応を少しずつ起こしにくくしていく治療です。いわば、“アレルギー体質そのものを改善していく治療”であり、従来の「症状をただ抑える薬」とは考え方が大きく異なります。
舌下免疫療法の治療方法
治療方法はとてもシンプルで、1日1回、専用のお薬を舌の下に含ませ、1分ほど保持してから飲み込みます。その後5分程度は飲食を控えていただきます。
基本的には毎日ご自宅で継続する治療であり、通院は月1回程度です。最初だけは院内で安全確認を行いますが、その後はご自宅で継続していただく流れになります。
舌下免疫療法が効果を発揮するまでの期間
ただし、舌下免疫療法は「即効性のある治療」ではありません。一般的には数ヶ月~1年ほどで「少し楽になったかも」と感じ始め、しっかりとした効果を期待するには3~5年程度の継続が推奨されています。その代わり、うまく効果が出ると、花粉症の薬をかなり減らせたり、中にはほとんど症状が出なくなる方もいらっしゃいます。
実際、私自身も舌下免疫療法を行った経験があり、症状の改善をかなり実感しています。多忙な折、かなり適当に継続していた時期もありましたが、それでも以前より相当楽になっており、その効果が維持されています。
もちろん個人差はありますが、「毎年春が来るのが怖かった」という状態から、「薬を少し飲めば普通に過ごせる」レベルまで改善される方はたくさんいらっしゃいます。特に若い方や、今後何十年も花粉症と付き合う可能性がある方には、とても価値のある治療だと思います。
舌下免疫療法はダニアレルギーにも有効
また、舌下免疫療法はスギ花粉だけではなく、「ダニアレルギー」にも対応しています。
ダニは一年中存在するため、慢性的な鼻炎、鼻づまり、咳、睡眠の質低下などに関係していることも多く、「実は年中鼻の調子が悪い」という方は、ダニが原因になっているケースもあります。スギとダニを組み合わせて治療することも可能です。
花粉症注射(ステロイド注射)のリスク
一方で、最近では「花粉症注射」と称して、ステロイド注射を行うケースも一部でみられます。しかし、この方法については、日本のアレルギー関連学会では推奨されていません。理由としては、ステロイドが体の中に3ヶ月以上の長期間残り、花粉症だけでなく、他の免疫反応まで強く抑えてしまう可能性があるためです。
注射部位の脂肪が萎縮して皮膚が凹んでしまうこともありますし、毎年繰り返すことで、骨粗鬆症、糖尿病、感染症リスクの増加、さらには大腿骨頭壊死などの重大な副作用につながる可能性もあります。特に女性は、加齢とともに骨への影響が問題になることも多くあります。
もちろん、1回で劇的に症状が楽になるケースがあるため、「効いた!」という声だけが広がりやすい治療ではあります。しかし、「花粉症を抑える代わりに、将来的な健康を害してしまう」のであれば、本当にそれで良いのかは慎重に考える必要があります。当院では、そのような理由から、花粉症に対するステロイド注射は行っておりません。
身体への負担、長期的な改善の観点からも舌下免疫療法がおすすめ
舌下免疫療法は、確かに時間も手間もかかる治療です。しかし、その分、体への負担が比較的少なく、長期的な改善を目指せる非常に理にかなった治療でもあります。「毎年この時期がつらい」「薬を飲み続ける生活から少しでも解放されたい」「将来的に少しでも楽になりたい」という方には、ぜひ一度知っていただきたい治療法です。
当院では、連携薬局と協力しながら、毎月10名程度の新規導入枠を確保しております。ただし、全国的に新規導入用のお薬が不足している状況もあり、時期によっては早めに枠が埋まってしまうことがあります。ご興味のある方は、お早めにご相談くださいませ。
- (参考文献)
- (執筆者情報)
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小谷 和弘
日本皮膚科学会 皮膚科専門医
厚生労働省指定 麻酔科標榜医
日本内科学会 認定内科医

