赤ら顔・酒さ(しゅさ)

当院の赤ら顔・酒さ治療の特長

  • ロゼックス(保険適用の外用薬)や各種内服薬を使用して、炎症や赤みを軽減します。
  • 症状に応じ、皮脂抑制や赤み改善効果のあるアゼライン酸を含む外用治療も行っています。
  • 通常の投薬で効果が弱い場合には、イソトレチノインの内服をトライしてみることも可能です。
  • 難治例には、ロングパルスヤグレーザーを使用します。パルス色素レーザーよりも痛みが少ない優しい治療です。
  • ロングパルスヤグレーザー治療では、肌質全体の改善、毛穴を目立たなくする効果等も期待できます。

赤ら顔・酒さとは

赤ら顔は、皮膚の浅い部分の毛細血管が拡張し、透けて見えることで顔が赤くなります。酒さ(しゅさ)は赤ら顔を引き起こす皮膚の疾患で、鼻や両頬などに赤みやニキビのような症状が数ヵ月以上にわたってしつこく現れます。敏感肌を伴うことがあり、鼻や頬の周辺には毛細血管が密集しているため、細い血管が浮き出て見えることもあります。30代以降の方が発症しやすく、特に女性に多いことが特徴です。

赤ら顔・酒さの症状

酒さは、鼻や頬などに全体的な赤みやニキビのような症状が起こる疾患です。ニキビとは違い、面皰と呼ばれる毛穴の入口の角化や詰まりは伴いません。敏感肌の症状や、ほてりやヒリヒリ感などもみられます。

赤ら顔・酒さの種類

酒さは症状や発症部位によって、次の4種類に分類されています。

紅斑毛細血管拡張型(第1度酒さ)

鼻や頬、眉間、顎などが赤くなり、毛細血管の拡張が目立つ状態です。かゆみやほてり、ヒリヒリ感があり、寒暖差や飲酒で増強することがあります。

丘疹膿疱型(第2度酒さ)

丘疹膿疱型(きゅうしんのうほうがた)は、紅斑毛細血管拡張型が進行して、ニキビのような赤いブツブツ(丘疹)がみられたり、膿を持ったブツブツ(膿疱)が生じるようになった状態です。ニキビとは異なり、毛穴の詰まり(面皰)はみられず、毛穴に一致しない丘疹や膿疱が生じることもあります。

瘤腫型・鼻瘤(第3度酒さ)

瘤腫型(りゅうしゅがた)・鼻瘤(びりゅう)は丘疹が増えて集まり、腫瘤(しゅりゅう)と呼ばれる凸凹としたできもののようになる症状です。特に鼻では皮膚が赤紫色になり、でこぼこに盛り上がってミカンの皮のようになります(鼻瘤)。

眼型

眼型では、眼の周りの腫れや充血が生じ、結膜炎や角膜炎を合併することがあります。皮膚の症状よりも先に起こることもあります。

赤ら顔・酒さの原因

赤ら顔・酒さの原因はまだはっきりとわかっていません。遺伝的要因や免疫の不調、末梢血管の拡張を司る神経や血管の構造的な問題、皮膚の常在細菌を抑制するためのタンパク質の問題やニキビダニの関与などが考えられています。

なお、過度の日光曝露や精神的ストレス、アルコールや刺激物の摂取、高い気温などが増悪因子になるといわれています。

赤ら顔・酒さに似た疾患

赤ら顔・酒さに似た疾患には、酒さ様皮膚炎と脂漏性皮膚炎があります。

酒さ様皮膚炎

酒さ様皮膚炎はステロイド誘発性皮膚炎とも呼ばれる、ステロイドを長期間にわたって顔に外用することで、酒さのように赤みや赤い丘疹、膿疱が生じる症状です。口の周りや顎にできるものを口囲皮膚炎ということもあります。

脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎は、酒さと同じように肌に赤みが生じる皮膚疾患です。皮膚に常在しているカビの一種であるマラセチアが発症に関与していると考えられています。酒さでは毛細血管の拡張やボツボツした肌の状態が起こりますが、脂漏性皮膚炎には毛細血管の拡張はみられず、肌の状態もガサガサとしています。また、酒さが顔の中心に近い場所に症状が現れるのに対し、脂漏性皮膚炎は眉や眉間、鼻の脇などに症状がよく現れます。

赤ら顔・酒さの治療

赤ら顔・酒さの治療は、寛解や緩和を目指して、長期的に症状をコントロールしていくものになります。酒さの治療には外用薬、内服薬、レーザー治療があります。また、鼻瘤に対しては、炭酸ガスレーザーによる焼却術や外科的切除を行うことがあります。

外用薬

赤ら顔・酒さの治療で用いられる外用薬には、次のようなものがあります。

タクロリムス

アトピー性皮膚炎の治療に使用されるタクロリムスが、酒さに効果的なことがあります。ステロイドど同様に赤みや炎症を抑える作用のある外用薬ですが、ステロイドとは異なり長期的に塗布しても皮膚を薄くしたり、毛細血管を拡張させる副作用がなく、予防的にも使用できます。ただし妊娠中、授乳中の方は外用できないため注意が必要です。

メトロニダゾール

2022年に保険適用になった酒さ治療の外用薬です。菌の分裂や増殖を抑え、殺菌作用を発揮します。酒さの要因とされている皮膚の常在細菌やニキビダニなどを殺菌することができるため、酒さの症状の改善に効果的です。副作用が少ないという特徴があり、酒さの再発防止のための維持治療にも有効と考えられています。

イベルメクチン

イベルメクチンは、ニキビダニが原因となるような炎症の強いボツボツに有効な外用薬です。丘疹膿疱型の酒さの、赤いブツブツや赤みの消退に効果が期待できます。メトロニダゾールよりも効果が高いことが報告されており、早ければ2週間ほどで症状の改善がみられます。保険適用外のため、自費診療となります。

アゼライン酸

アゼライン酸は、元々はニキビの治療薬ですが、酒さに対してもメトロニダゾールと同等の有効性があるといわれています。毛穴詰まりの原因である皮脂を溶かすことで、皮脂の分泌や毛穴の状態を整えます。抗菌活性や炎症軽減効果もあるため、丘疹膿疱型酒さのボツボツした症状の改善が期待できます。皮膚への刺激が少ないため、妊娠中・妊娠の可能性のある方でも使用することが可能です。保険が適用されないため、自費診療になります。

内服薬

赤ら顔・酒さの治療で用いられる内服薬には、次のようなものがあります。

抗生物質

ロキシスロマイシン、ミノサイクリン塩酸塩などの抗生物質を内服します。炎症を抑える効果や、免疫を調整する作用が期待でき、丘疹や膿疱を伴う酒さに効果的です。酒さの治療は長期にわたるため、内服する期間も長くなることが考えられますが、抗生物質の長期内服ではまれに肝機能障害を起こすことがあるため、定期的な血液検査が必要になります。

イソトレチノイン

重症ニキビの治療薬として知られているイソトレチノインは、酒さにも有効であるといわれています。酒さの赤いボツボツや、皮脂が増えて肌がゴワゴワする症状にも効果が期待できます。イソトレチノインは保険適用外ですが、外用薬や抗生物質の内服で酒さの症状に改善がみられない場合に試す価値があるといえます。服用中は、血液検査で肝機能や中性脂肪などを定期的に確認する必要があります。また妊娠中の方、妊娠する可能性のある方は使用できません。

レーザー治療

酒さによる鼻や頬の赤みが目立つ赤ら顔や、毛細血管が拡張して網目状に表面に浮き出た症状には、レーザーによる治療が効果的です。

パルス色素レーザー

血管の赤みに反応するレーザーで、拡張した毛細血管を縮小、減少させることで、紅斑毛細血管拡張型の赤ら顔・酒さに対して強い効果を発揮します。外用薬、内服薬による治療と併行して行います。

ロングパルスYAGレーザー

バルス色素レーザーと同様に、血管にある赤みに反応するレーザーです。レーザー光をシャワーのように肌に照射することで、表皮に損傷を与えずに、深部の毛細血管に作用して赤みを改善します。紅斑毛細血管拡張型や瘤腫型・鼻瘤の酒さに対して効果が期待できます。

当院では、ジェネシスというロングパルスYAGレーザー機器を導入しています。従来のYAGレーザーと比べて、治療効果と安全性がさらに高められており、肌の赤みを改善させるだけでなく、コラーゲンの再生を促すため肌のキメが整い、ハリも戻ります。またパルス色素レーザーと比べて、照射中の痛みはほとんどなく、皮下出血のダウンタイムも少ないため治療直後からメイクが可能です。

ジェネシスについて

鼻瘤に対する治療

鼻瘤に対しては、ロングパルスYAGレーザーによる治療の他に、メスや炭酸ガスレーザーなどを用いた外科的切除を行うことがあります。鼻は皮脂腺が発達している部位で傷の治りが早いため、鼻瘤の外科的切除は傷跡が残るリスクが少ないといえます。また、1回の手術で終わる場合が多いため、レーザー治療などと比べて短期間で治療が完了することもメリットです。ただし、2週間ほどのダウンタイム中は傷跡をガーゼなどで保護する必要があります。


(参考文献)

日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」

酒さ・酒さ様皮膚炎

(監修者情報)

小谷 和弘

日本皮膚科学会 皮膚科専門医

厚生労働省指定 麻酔科標榜医

日本内科学会 認定内科医

皮膚科・小児皮膚科・美容皮膚科・アレルギー科

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