医療コラム
難治性のいぼに効果絶大な「いぼはぎ手術」とは?皮膚科専門医が解説
「もう何年も皮膚科に通っているのに、指のいぼが一向に治らない」「毎週のように液体窒素の治療を受けているのに、足の裏のいぼがいっこうに小さくならない」そうしたお悩みを抱えて当院を受診される患者様は、少なくありません。
ウイルス性いぼ(尋常性疣贅・じんじょうせいゆうぜい)は、皮膚科の日常診療において最もよく目にする疾患のひとつでありながら、実は「最も治りにくい疾患」のひとつでもあります。1か所のいぼを治すのに数年を要することも珍しくなく、根気強く通院を続けても改善しない現実に、心が折れてしまう患者様も少なくありません。
当院では、こうした難治性のいぼに対して「いぼはぎ(核出)手術」という外科的な治療を行っています。今回は、なぜいぼが治りにくいのか、一般的な治療法にはどのような限界があるのか、そして当院で行う手術がどのようなものかを詳しく解説します。
目次
ウイルス性いぼ(尋常性疣贅)とはどんな病気か
いぼの正体は、ヒトパピローマウイルス(HPV)が皮膚の小さな傷から侵入し、表皮の一番深い層である基底細胞に感染することで生じる良性の腫瘍です。手指や足の裏など、日常的に細かい傷がつきやすい部位に好発し、表面がザラザラとした盛り上がりが特徴です。
いぼにはいくつかのタイプがありますが、外来を受診するきっかけとして最も多いのが尋常性疣贅で、ウイルス性いぼ全体の中でも高い割合を占めるとされています。感染力自体は強くありませんが、皮膚のバリア機能が低下している部分に触れることで、自分の体の中で別の部位へ広がったり(自家感染)、公共のプールやジムの床など、間接的な接触を介して人にうつる可能性があるとされています。
なぜ「最も治りにくい病気」といわれるのか
いぼの治療で標準的に行われているのが、-196℃の液体窒素を綿棒などで患部に押し当てる冷凍凝固療法です。保険適用で費用も安く、多くの皮膚科で第一選択とされていますが、この治療には構造的な限界があります。
冷凍凝固療法では、いぼの組織を凍結してダメージを与え、さらに免疫反応を誘導することで改善を目指します。ただし、一度の治療ですべての病変を除去することは難しく、通常は複数回の治療が必要です。皮膚のターンオーバーの周期に合わせて1~2週間おきに繰り返し通院する必要があり、ウイルスが皮膚の深い層(基底層)に根強く残っている場合には、何度治療してもいぼが再発してしまうこともあります。
免疫機能が正常な方であれば、いぼは自然に消退することも多いとされていますが、一部のいぼは何年にもわたって残り続けることが医学的にも知られています。実際に、日本皮膚科学会が策定した尋常性疣贅の診療ガイドラインでも、難治例に対して液体窒素凍結療法が長期間にわたり漫然と繰り返されがちであることが、ガイドライン作成の背景として挙げられています。「治療をしているのに治らない」という状況が起こりやすい病気だということが、専門家の間でも課題として認識されているのです。
毎週通っても治らない——通院を重ねるつらさ
実際に当院にご相談にいらっしゃる患者様の中には、「1か所のいぼのために、他院で数年にわたり毎週のように通院していた」という方が少なくありません。冷凍凝固療法は1回の治療で終わるものではなく、根気強く繰り返す必要がある治療である一方、何年通っても目に見えて改善しないと、患者様の心が折れてしまうのも無理のないことです。
特に、指先や足の裏など日常生活で頻繁に使う部位にいぼができると、歩行時の痛みや、物をつかむ際の違和感など、生活の質に直結する支障が出ることもあります。「痛みを我慢しながら通院を続けているのに、いっこうに良くならない」という声を、当院では数多くお聞きしてきました。
保険適用外のレーザー治療に注意
液体窒素治療がうまくいかない場合、「レーザーでいぼを取ります」と謳うクリニックを検討される方もいらっしゃいます。しかし、こうした炭酸ガスレーザーなどのレーザー治療の多くは美容目的の自費診療として扱われることが多く、保険が適用されないケースが一般的です。
自費診療である以上、費用は決して安くありません。加えて、レーザーによる焼灼も、いぼの深部までしっかりと除去できていなければ結局再発してしまうリスクが残ります。「高額な費用を払ったのに治らなかった」というご相談で当院を受診される患者様も実際にいらっしゃいます。治療法を選ぶ際には、保険適用の有無や治療の仕組みをよく理解した上で判断することが大切です。
主な治療法の比較(一般的な傾向)
- 液体窒素冷凍凝固療法:保険適用、標準治療。繰り返しの通院が必要で、難治例では長期化しやすい。
- サリチル酸外用・ヨクイニン内服:保険適用、補助的な治療。単独では効果が緩やかなことが多い。
- 炭酸ガスレーザーなどのレーザー:多くは自費診療。1回で焼灼できるが、深部の取り残しがあれば再発しうる。
- 外科的切除(いぼはぎ・核出術):保険適用が可能な手術。いぼの根までを直接摘出する。
当院で行う「いぼはぎ(核出)手術」とは
当院では、液体窒素治療などを繰り返しても改善しない難治性のいぼに対して、局所麻酔下でいぼそのものを外科的に核出する「いぼはぎ手術」を行っています。
これは、いぼを少しずつ壊していく冷凍凝固療法とは異なり、メスを用いていぼの組織を直接、根の部分までしっかりと摘出する方法です。ウイルスが潜んでいる基底層を含めて一塊として取り除くことができれば、繰り返し通院しなくても一度の手術でいぼを終わらせられる可能性が高くなります。何年も治療を続けても改善しなかった患者様にとって、大きな選択肢のひとつとなる手術です。
足首の難治性ウイルス性いぼの除去手術の症例写真
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手術前
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2ヶ月後
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4ヶ月後
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いぼはぎ手術の難しさ——どの層まで摘出するかの見極め
「それなら、いぼはぎ手術を受ければすぐに解決するのでは」と思われるかもしれませんが、この手術は決して簡単なものではありません。
いぼの組織を摘出する際、深く削りすぎると出血が止まりにくくなり、周囲の正常な組織へのダメージも大きくなります。一方で、浅すぎるとウイルスが残った組織を取りきれず、再発を招いてしまいます。「出血をコントロールしながら、ウイルスが潜む層まで確実に、かつ最小限の範囲で摘出する」——このバランスを見極めるには、かなりの技術と熟練した経験が求められます。
そのため、「手術を得意としている」と標榜している皮膚科医や形成外科医であっても、いぼはぎ手術を実際に高い精度で行える医師は限られているのが実情です。粉瘤やほくろの切除と比べても、いぼの摘出は組織の境界がはっきりせず、術者の判断力が問われる手術のひとつといえます。
深さの見極めが手術の要
- 削りすぎ:出血のコントロールが難しくなり、傷跡も大きくなりやすい。
- 浅すぎ:ウイルスが残った部分が取りきれず、再発につながる。
このどちらにも偏らない見極めには、豊富な手術経験が必要です。
神奈川県内外から患者様が来院される理由
こうした背景もあり、当院には神奈川県内はもちろん、東京都・千葉県・埼玉県・静岡県など、県外からもインターネットで調べて手術を希望して来院される患者様もいらっしゃいます。他の皮膚科クリニックから直接、紹介状をいただくことも多いです。
「近くの皮膚科で何年も治らなかった」「他院でレーザー治療を受けたが再発した」といったご相談を数多くお受けし、いぼの状態を丁寧に診察した上で、手術が適応となるかどうかをご説明しています。
術後の経過と、当院でのいぼ治療について
いぼはぎ手術は、決して負担の軽い処置ではありません。手術後、傷の皮膚が再生するまでにはおおむね1か月程度かかり、その間は痛みや出血を伴うこともあります。決して「簡単に、すぐに治る」治療ではないことは、あらかじめご理解いただく必要があります。
しかし、何年も治らずに悩み続け、半ば治療を諦めかけていた患者様にとっては、このいぼはぎ手術によって長年の悩みから解放されることも多く、大変喜んでいただいている治療のひとつです。
当院では、皮膚科専門医による診察のもと、いぼの状態や部位に応じて、液体窒素治療から外科的な摘出まで適切な治療法をご提案しています。「何年も治らずに悩んでいる」「他院で治療を続けているが改善しない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
- (参考文献)
- (執筆者情報)
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小谷 和弘
日本皮膚科学会 皮膚科専門医
厚生労働省指定 麻酔科標榜医
日本内科学会 認定内科医

