ウイルス性イボ(尋常性疣贅)

当院のウイルス性イボ治療の特長

  • 当院では、イボ治療の第一選択として液体窒素による冷凍凝固療法を行い、治療の経過に応じて必要な追加治療を行っています。
  • イボの種類、部位、大きさ、年齢に応じて、患者様一人ひとりに最適な治療を提供し、経過によって内服薬や外用薬も併用しています。
  • 液体窒素の治療を嫌がるお子さんには、モノクロロ酢酸の外用により、痛みを少なくして治療を行う工夫を行っております。
  • 水いぼの除去を希望される患者様には、麻酔テープを使用して痛みを軽減し、痕が残りにくいよう配慮して治療を進めています。
  • 顔や首の加齢性のイボや治りにくいウイルス性のイボに対しても、傷痕が目立たないように配慮しながら手術療法での除去にも対応しています。

ウイルス性イボとは

ウイルス性のイボは、ヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス、HPV)というウイルスが皮膚に感染することで生じます。ウイルスが皮膚の小さな傷から侵入することで感染するため、外傷の多い手足に多く見られますが、顔などにできる場合もあります。初期は小さなできものが生じ、時間が経つとともにそれが大きく盛り上がっていき、数も増えていきます。

ウイルス性イボの原因

前述したように、ウイルス性イボの原因はヒトパピローマウイルスです。このウイルスは150種類以上が確認されており、感染したウイルスの種類によってイボの症状や発生する場所が異なります。ウイルスが原因のため、イボに触れた場所がウイルスに感染して、イボがうつってしまうため注意が必要です。

ウイルス性イボの種類

主なウイルス性イボの種類には、下記のようなものがあります。

尋常性疣贅

尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)は、最も一般的なウイルス性イボで、自覚症状がほとんどないことが特徴です。手足の指、掌、足の裏によくできやすいですが、全身に生じる可能性があります。まず数mm程度の小さな盛り上がりができ、増大すると茶褐色の斑点がみられるようになります。足の裏にできるものは足底疣贅と呼ばれ、足裏の角質は厚いため、角質の中に押し込まれたようなイボを形成します。足底疣贅はタコやウオノメと似ていますが、表面の角質を削ると点状出血がみられることで区別できます。尋常性疣贅はHPV2、4、7、27、57型の感染で生じます。

青年性扁平疣贅

青年性扁平疣贅(せいねんせいへんぺいゆうぜい)は、若い女性に多く見られるイボで、特に顔や腕などに生じやすいです。一般的なイボの盛り上がった形状と異なり、表面が滑らかで上部が平らなイボです。自分自身の皮膚に感染しやすいため、複数できることが珍しくなく、線上に並ぶこともあります。顔や腕の中でもおでこや手の甲にできやすく、茶色や肌色の小さな突起が広がることから、シミと勘違いされることも多いです。青年性扁平疣贅はHPV3、10、28、29、94型の感染で生じます。

尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマは、性器や肛門の周辺にイボができる疾患です。初期の状態は小さな先が尖った形をしていますが、放っておくとイボが大きくなったり、数が増えていきます。さらに放置すると、イボ同士がくっつくことでカリフラワーのような形状になったり、腫瘍化してニワトリのトサカ状になったりします。女性の場合は膣の内側にイボが生じることもあり、発見が遅れるケースがあります。自覚症状がないことが多いですが、かゆみや痛みを伴うこともあります。尖圭コンジローマはHPV6、11型の感染で生じます。

水イボ(伝染性軟属腫)

ヒトパピローマウイルスによるイボと違い、水イボは伝染性軟属腫ウイルスによる感染症です。学童期以前の小児に見られることが多く、水遊びやビート板・タオルの共有、浴場などで肌と肌が接触することで感染する可能性があります。14〜50日程度の潜伏期間を経て、体幹や四肢、太ももの内側や下腹部などに発生します。肌色や白みがかった直径2~5mmほどのドーム状の発疹が生じ、通常であれば痛みやかゆみを伴いませんが、かき傷によって炎症が起きるとかゆみなどを感じる場合があります。水イボは、治療を施さなくとも1〜2年ほどで自然治癒するため、状態によっては経過観察することもあります。治療は主に、専用のピンセットによる除去と外用剤や保湿剤などの塗り薬によって行います。

ウイルス性イボの治療

これまでに解説したとおり、ウイルス性イボにはさまざまな種類があります。当院ではウイルス性イボの種類や大きさ、生じた部位や患者さんの年齢などに応じて、適切な治療方法を提供しています。

液体窒素

ウイルス性イボの一般的な治療方法で、マイナス196度の液体窒素を用いてイボが生じた皮膚を冷凍凝固させ、凍結と解凍を3~4回繰り返します。効果が高く、副作用が少ない治療法ですが、治療の際に痛みを伴います。基本的に1~2週間に一度の通院を、数週間から数ヶ月にわたって継続する必要があります。イボのサイズが大きいほど、またできた場所の皮膚が厚いほど治療に時間がかかるため、早めの受診を心がけましょう。

外用薬

ウイルス性イボの治療に使用する外用薬には、下記のようなものが挙げられます。

サリチル酸絆創膏

サリチル酸には皮膚の角層を剥がすとともにイボへの免疫力を高める作用があるとされており、サリチル酸絆創膏(スピール膏)を貼ることで分厚くなった皮膚が白くふやけて剥がれ落ち、イボが小さくなっていきます。日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されていて、液体窒素による冷凍凝固療法などと組み合わせることでより効果が期待できます。貼るタイプ以外に塗るタイプもあり、イボの生じた部位や患者さんの年齢によって使い分けます。

べセルナ軟膏

もともとは尖圭コンジローマの治療に用いられる軟膏で、塗布した部位のイボに対する免疫力を高める作用があります。皮膚が薄い部分のイボに対して効果を発揮します。

活性型ビタミンD3外用薬

ビタミンD3には、皮膚の細胞増殖を抑制し、皮膚が厚くなることを防ぐ作用があるため、それを用いた活性型ビタミンD3外用薬をイボに塗ったうえで、ラップやサリチル酸絆創膏で密封すると治療効果が高くなります。

内服薬

ウイルス性イボの治療では、内服薬を処方する場合もあります。

ヨクイニン

イネ科の植物であるハトムギの種子に含まれる成分を抽出した漢方薬で、保険が適用されています。3ヵ月間ほど内服することで、ウイルスに対する免疫力を高める作用があるとされており、特に子どもに効果が高いことが報告されています。単独で使用することは少なく、液体窒素による冷凍凝固療法と併用することが多いです。

チガソン

チガソンはビタミンAの誘導体であるレチノイドの一種で、皮膚細胞の成長と分化を正常化する作用を持ち、異常な角化を抑制しウイルス性イボの縮小や消失を促します。液体窒素を用いた治療と併用することでより効果を発揮しますが、ビタミンAには内服による催奇形性(胎児に重篤な奇形を引き起こす)の報告があるため、妊娠中や妊娠の可能性がある女性がチガソンを服用することは禁忌とされています。女性は最低でも2年、男性は最低でも半年の避妊が必要となるため、パートナーの方としっかりと相談したうえで、医師による適切な管理の下で服用を始めるようにしましょう。当院では未対応です。

レーザー治療

難症例のイボの治療に対して、レーザーによる治療が行われることがあります。

炭酸ガスレーザー

局所麻酔を行ったうえで、炭酸ガスレーザーを使用して、イボをしっかりと除去する治療方法です。液体窒素による冷凍凝固療法と比べて治癒率が高く、短期間で治療が完了します。治療後は皮膚にイボをくり抜いたような欠損ができるため、傷がふさがるまでの3~4週間は軟膏を塗ってガーゼで保護する必要があります。ただし保険が効かない自費治療のため、高額な費用を請求されるケースもあります。当院では炭酸ガスレーザーと同様の治療効果が得られ、かつ保険適用で対応可能なサージトロンによるイボ剥ぎ手術をメインに行なっております。

日帰り手術について

ロングパルスYAGレーザー

ロングパルスYAGレーザーによって、イボに栄養を与える血管にダメージを加え、イボを消失させる治療法です。自費治療にはなりますが、照射中の痛みがほとんどなく安心して治療を受けることができます。1ヵ月に一度の治療を2~5回ほど行います。現在、当院では基本的に未対応ですが、レーザー治療を希望される方が居られれば、対応を検討いたします

パルス色素レーザー

液体窒素による冷凍凝固療法で効果がみられない難症例のウイルス性イボの場合、赤みに反応するパルス色素レーザーであるVビームによる治療を行うことがあります。Vビームには血液中のヘモグロビンに反応して血管を破壊する作用があるため、余計な血管が増えているウイルス性イボの患部に照射することでイボを取り除きます。保険の適用がなく、自費治療になります。当院では未対応です。

局所注射

ウイルス性イボの治療では、ブレオマイシンやインターフェロンを局所注射することがあります。なお、どちらも保険適用がなく自費治療になります。実際には、そこまで治療効果が高くないことも多く、当院では特に推奨しておりません

ブレオマイシン

ブレオマイシンは主にがんの治療に用いられる抗がん剤で、少量をウイルス性イボに局所注射することで、ウイルスを持っている細胞を破壊する効果が期待できます。液体窒素による冷凍凝固療法で治りづらい足の裏などのイボに使用することが多いです。ただし、治療では疼痛を伴い、副作用として爪や爪の周囲に変形が起こるケースがあります。当院未対応。

インターフェロン

インターフェロンをイボの周囲に局所注射することで、免疫作用を向上させ、イボの周囲からウイルスの増殖を抑制します。ブレオマイシンと併用することで効果を発揮します。当院未対応。

塗布療法

SADBE療法

SADBE(squaric acid dibutylester)という感作性の化学物質を塗布して、人工的にかぶれを引き起こすことで免疫力を高める治療方法です。円形脱毛症の治療にも用いられます。冷凍凝固療法と比べて治療期間が長くなりますが、疼痛がなく、日本皮膚科学会のガイドラインでも有用な治療選択肢の一つとされています。保険適用がなく、自費治療になります。こちらも当院では未対応です。

モノクロロ酢酸

液体窒素による治療が痛くてどうしても困難な子どもや、液体窒素でなかなか治癒しない難治性の患者様の場合に、モノクロロ酢酸を塗布する治療を行っています。強い酸性の化学物質の溶液をイボに塗り、イボの組織を腐食・壊死させることで、除去します。

外科的切除

手足の難治性のイボに行う治療です。局所麻酔を施した後、イボとその周辺を切除して縫合します。保険が効き、1回の手術でイボを除去できるという利点がありますが、取り残しによる再発や白い線状の傷跡が残る場合があります。

電気焼灼法

高周波電流(サージトロン・デルマトロンなど)を利用してイボを焼き切る方法です。この方法は即効性があり、特に顔や首のようなデリケートな部位での治療に適しています。術後の色素沈着や瘢痕のリスクが0ではありませんが、適切な術後ケアを行えば通常は問題ありません。イボの種類や個数によっては、保険適用外となります。

いぼ剥ぎ法

メスまたは電気メス(サージトロン)を使って硬いイボを切り取る方法です。この方法は、特に大きなイボや、平坦でも皮膚の中に埋まっていて治りにくいウイルス性のイボに対して使用されます。手術の際は局所麻酔を使用し、術後の痛みや傷痕が残る可能性を最小限に抑えて施術をします。各種レーザーと異なり保険が適用され、かつ抗がん剤であるブレオマイシンやインターフェロンなど特殊な薬品を使う必要もないため、難治性のイボで長期間液体窒素を行っても改善が見られない方に最も適している方法です。加齢性のイボ(老人性疣贅)にも適用されることがあります。そのため、当院では治りにくいイボに対しては、この治療をお薦めしております。

Q&A

ウイルス性イボはどのように感染しますか?

ウイルス性イボは接触感染によって広がります。他人のイボや、ウイルスに感染した物(例えばタオルや床)に触れることで感染することがあります。また、自分のイボを引っ掻いたり切ったりすることで、ウイルスが他の部位に広がることもあります。ただし、身近な病気であるにも関わらず、その正確な感染の仕組みについては、まだまだ医学的に解明されていないことも多いです。

ウイルス性イボは自然に治りますか?

ウイルス性イボは時間の経過とともに自然に消えることもありますが、それには数か月から数年かかる場合があります。また、ウイルスの種類や免疫力の状態によっては自然に治癒しにくいケースもあります。患部に痛みがある場合や、イボの数が増えてきている場合は治療を検討した方が良いでしょう。ただし、皮膚科で治療しても、治癒するまでには通院の回数や期間はかなり必要となることが多く、根気が必要です

ウイルス性イボを予防する方法はありますか?

ウイルス性イボを予防するためには、まめに手洗いをすること、足元の清潔さを保つことが大切です。公共のシャワールームやプールサイドではサンダルを履くことで感染リスクを減らせます。また、他人のイボに触れないことや、自分のイボを引っ掻かないように注意することも重要です。普段から、食事や睡眠などの生活習慣を適切なものにするよう心がけ、自分の免疫力を高めておくことも重要と言えます。

ウイルス性イボとウオノメの違いについて教えてください。

ウイルス性イボとウオノメは見た目が似ていることが多いですが、原因と治療方法が異なります。ウイルス性イボはヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされるもので、ウイルスの感染によって生じます。一方で、ウオノメは長時間の摩擦や圧力によって皮膚が厚くなることで生じるもので、ウイルスとは関係ありません。それぞれに適した治療法があるため、気になるできものが生じた場合は、まずは皮膚科医の診察を受けることをおすすめします。

ウイルス性イボやウオノメは市販薬を使って治療しても良いですか?

効果に個人差が生じますが、ウイルス性イボやウオノメに対して市販薬を使用することも可能です。ウイルス性イボ向けの市販薬には、サリチル酸や凍結スプレーがあり、これらを適切に使用すれば治癒が期待できますが、完治までに相当な時間がかかることが多いです。ウオノメにも、角質を柔らかくするサリチル酸配合の市販薬が使われます。自己治療で症状が改善しない場合や、痛みが強い場合は、皮膚科医に相談することをおすすめします。また、糖尿病の方や血行障害のある方は自己治療は行わず、必ず医師の診察を受けるようにしてください。

(参考文献)
(監修者情報)

小谷 和弘

日本皮膚科学会 皮膚科専門医

厚生労働省指定 麻酔科標榜医

日本内科学会 認定内科医

皮膚科・小児皮膚科・美容皮膚科・アレルギー科

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