とびひ(伝染性膿痂疹)

当院のとびひ治療の特長

  • 細菌培養検査を積極的に行い、感染の原因菌を特定して正確な診断を行います。
  • 抗生物質は体重に合わせて適切な量と種類を選び、効果的な治療を行っています。
  • 看護師が実際の処置の仕方を指導し、自宅でも適切にケアできるようサポートします。
  • 早期治療と再発防止に力を入れ、患者様の生活習慣に合わせた予防指導を行います。

とびひとは

とびひは、医学的には伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)と呼ばれる皮膚病で、非常に感染力の強い皮膚感染症の一つです。その名の通り、患部の膿疱(のうほう)が破れて、ばい菌が飛び散ることで感染が拡大するため、「とびひ」という俗称で呼ばれるようになりました。

とびひは、主に乳幼児に多くみられる皮膚病ですが、大人でも感染することがあります。皮膚が弱っていたり、免疫力が低下していたりする場合は、特に感染しやすいと言われています。

とびひの症状

とびひにかかると、最初は皮膚の一部が赤く腫れてきて、そこに小さな水ぶくれができます。この水ぶくれは次第に大きくなり、中に黄色っぽい膿が溜まった膿疱(のうほう)になります。膿疱の周りの皮膚は赤く腫れ上がり、触ると熱を持っています。

膿疱が破れると黄色っぽい液体が出てきて、その後、かさぶたができます。このかさぶたの下では細菌が増え続け、新しい膿疱ができます。こうして、とびひは次々と新しい膿疱を作りながら、周りの皮膚に広がっていくのです。

とびひの症状は、患者さんの年齢や体の状態、感染した場所などによって少しずつ違います。赤ちゃんや小さな子どもの場合は、おむつで覆われた部分や、首の後ろ、脇の下などに発症しやすいと言われています。大人の場合は、皮膚が弱っているところや、傷があるところに発症しやすい傾向があります。

とびひにかかると、患部の痛みやかゆみを感じることがあります。また、近くのリンパ節が腫れて痛むこともあります。ひどい場合は、発熱や体のだるさなどを感じることもあります。

とびひの種類

とびひは、膿疱の性状から、大きく2つのタイプに分けられます。

水疱性膿痂疹

水疱性膿痂疹は、黄色ブドウ球菌という細菌が原因のとびひです。感染すると、皮膚の表面に小さな水ぶくれができるのが特徴です。この水ぶくれは、薄い皮膚に覆われているため、すぐに破れてしまいます。

水ぶくれが破れると、そこから黄色っぽい液体が出てきます。この液体には大量の細菌が含まれているため、周りの皮膚に触れると感染が広がってしまいます。水疱性膿痂疹は、感染力が非常に強いタイプのとびひなのです。

水疱性膿痂疹の水ぶくれは、皮膚の浅いところにできるため、かさぶたができるまでの期間が短いです。早めに適切な治療を受ければ、比較的すぐに治すことができます。

水疱性膿痂疹は、夏場に多く見られ、特に子供に多いとされています。子供は皮膚のバリア機能が未発達なため、感染しやすいと考えられています。

痂皮性膿痂疹

痂皮性膿痂疹は、A群β溶血性レンサ球菌という細菌が原因のとびひです。かさぶたができては剥がれ落ち、新しいかさぶたができるという過程が繰り返されます。この過程で、とびひは周りの皮膚に感染を広げていきます。かさぶたの下では化膿が進んでいるため、適切な治療を行わないと、症状が長引く可能性があります。

痂皮性膿痂疹は、水疱性膿痂疹に比べて、感染部位が皮膚の深いところにあるため、治るまでに時間がかかります。また、痒みを伴うことが多く、患者さんがかさぶたを剥がしてしまうと、感染が広がるリスクがあります。

痂皮性膿痂疹は、季節を問わずかかる可能性がありますが、子供よりも大人に多く見られます。大人は皮膚が脆弱になりやすいため、感染しやすいと考えられています。特に、アトピー性皮膚炎など、皮膚のバリア機能が低下している人は要注意です。

とびひの原因

とびひは、細菌が皮膚に感染することで起こる病気です。とびひの原因となる代表的な細菌は、ブドウ球菌と溶血性レンサ球菌の2種類です。

溶血性レンサ球菌によるとびひは、ブドウ球菌によるとびひと比べて、症状が重くなりやすいと言われています。溶血性レンサ球菌は、ブドウ球菌よりも皮膚の奥深くまで入り込むため、より広い範囲に感染が広がる可能性があるのです。

とびひは、これらの細菌が皮膚の小さな傷や毛穴から侵入することで発症します。細菌が皮膚の中で増えると、皮膚の防御反応が働いて炎症が起こり、膿を持った吹き出物ができるのです。

とびひは、患部から出た膿やかさぶたに含まれる細菌が、他の人の皮膚に付着することで感染が広がります。特に、子供は皮膚のバリア機能が十分に発達していないため、とびひに感染しやすいと言われています。

また、とびひは自分の他の部位に感染することもあります。自分の患部から出た細菌が、自分の他の部位の皮膚に付着することで、感染が広がるのです。

とびひの治療

とびひの治療は、主に患部に直接塗る外用薬と、飲み薬である内服薬の2つに分けられます。

外用薬

とびひの治療で最も一般的なのは、患部に直接塗る外用薬です。外用薬には、抗生物質を含んだ軟膏や、消毒作用のある液体などがあります。

抗生物質の軟膏は、患部に塗ることで、とびひの原因となる細菌を直接退治します。代表的なものとしては、ゲンタマイシンやフシジン酸などがあります。これらの軟膏を1日数回患部に塗ることで、細菌の増殖を抑え、炎症を和らげることができます。

消毒作用のある外用薬としては、イソジンなどがあります。これらの薬を患部に塗ることで、細菌を殺菌し、感染の拡大を防ぐことができます。ただし、消毒薬は健康な皮膚にも刺激があるため、使用する際は慎重な判断が必要です。

外用薬を使用する際の注意点は、患部を清潔に保つことです。治療前に患部を石鹸で洗い、よく乾かしてから薬を塗るようにしましょう。また、薬を塗った後は、ガーゼなどで軽く覆うと、薬の効果がより持続します。

内服薬

とびひが広範囲に広がっている場合や、全身症状を伴う場合は、内服薬による治療が行われることがあります。内服薬としては、主に抗生物質が用いられます。

代表的な内服の抗生物質としては、セファクロルなどがあります。これらの薬は、体内で働いて細菌を退治します。内服薬は、外用薬と比べて全身に作用するため、より強力な効果が期待できます。

内服薬を処方する際は、患者さんの症状や体質、アレルギーの有無などを考慮して、最適な薬を選びます。また、飲み方や注意点についても丁寧に説明します。

内服薬を飲む際の注意点は、医師の指示通りに正しく服用することです。自己判断で服用を中断したり、増やしたりすることは避けましょう。また、内服薬の中には、食事の影響を受けるものもあるため、飲み方についても医師や薬剤師の指示に従うことが大切です。

とびひの予防と対策

子どもがとびひにかかってしまうと、痛みやかゆみなどの辛い症状に悩まされるだけでなく、感染が広がって大変なことになってしまうかもしれません。とびひを予防し感染拡大を防ぐためには、日頃からの心がけが大切です。

予防

まず、子どもの肌を清潔に保つことが何より大切です。毎日のお風呂は欠かさず、石鹸で優しく体を洗ってあげましょう。ゴシゴシと強く洗うのはNGです。子どもの肌は大人よりも繊細なので、優しく洗うことを心がけましょう。

お風呂上りには、保湿クリームや乳液などで、しっかりと子どもの肌の潤いを補給してあげましょう。特に、お肌の乾燥しやすい冬場は、保湿対策が欠かせません。

子どもの肌に傷をつくらないことも重要なポイントです。とびひの原因菌は、小さな傷からお肌に侵入します。虫刺されやニキビなどは、子どもが掻きむしらないように気をつけてあげましょう。もし傷ができてしまったら、清潔なガーゼで保護し、細菌の侵入を防ぎましょう。

保育園や幼稚園など、子どもが集団生活を送る場では、とびひが流行することもあります。施設からの連絡にも注意を払い、もしとびひの発生があれば、子どもの様子を注意深く見守るようにしましょう。

対策

子どもや身近な人がとびひに感染してしまったら、患者さんの使用したタオルや衣類、寝具は、家族で共用しないようにしましょう。これらを介して感染が広がる可能性があります。患者さんの使用したものは、高温の熱湯で洗濯し、しっかりと乾燥させましょう。

患者さんが触れた場所や物は、こまめに消毒を行いましょう。ドアノブや手すり、おもちゃなど、手が触れる場所は特に注意が必要です。アルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒液を使って、丁寧に拭き取りましょう。

患者さんのお世話をする際は、使い捨ての手袋を着用し、直接肌に触れないようにしましょう。また、患部に触れた後は、必ず石鹸で手を洗い、消毒することを忘れないことが大切です。

Q&A

とびひと水疱瘡(水ぼうそう)は同じ病気ですか?

とびひと水疱瘡は別の病気です。とびひは細菌感染による皮膚の病気で、水疱瘡はウイルス感染による病気です。両者とも水疱(水ぶくれ)ができる点は似ていますが、治療方法が異なります。

とびひは大人がかかることはありますか?

はい、大人もとびひにかかる可能性があります。とびひは子供に多い病気ですが、大人も免疫力が低下していたり、皮膚に傷があったりすると感染しやすくなります。

とびひは一度かかると二度とかからないのでしょうか?

いいえ、とびひに一度かかったからといって、二度とかからないわけではありません。ただし、一度感染すると、その菌に対する抗体ができるため、二度目以降の感染では症状が軽くなることもあります。

とびひが治るまでの期間はどのくらいですか?

とびひが治るまでの期間は、感染の範囲や重症度によって異なります。軽症の場合は1~2週間程度で治ることが多いですが、重症の場合は1ヶ月以上かかることもあります。

とびひが治った後、色素沈着が残ってしまいました。どうすればいいでしょうか?

色素沈着を早く改善するためには、日光対策が重要です。外出時は、帽子や日傘、日焼け止めクリームなどで、紫外線をしっかりとブロックしましょう。色素沈着の程度によっては、皮膚科で治療を受けることをおすすめします。

(参考文献)

最近のとびひの傾向と治療

日本皮膚科学会 Q&A「とびひ」

(監修者情報)

小谷 和弘

日本皮膚科学会 皮膚科専門医

厚生労働省指定 麻酔科標榜医

日本内科学会 認定内科医

皮膚科・小児皮膚科・美容皮膚科・アレルギー科

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