花粉症


花粉症とは

花粉症は、植物の花粉が体内に侵入することで引き起こされるアレルギー疾患で、主にアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎が知られています。花粉が目や鼻の粘膜に付着すると、免疫システムが過剰に反応し、アレルギー症状が現れます。

日本では特に、スギやヒノキの花粉が花粉症の主な原因として挙げられ、春に多くの人が花粉症の症状に悩まされます。花粉症は、非常に一般的な疾患であり、国民の約3割が何らかの形で花粉症を発症しているといわれています。

花粉症の症状

個人の体質や花粉の種類によって異なりますが、主な花粉症の症状には次のようなものがあります。

くしゃみ

突然止まらないくしゃみが連続して出ることが多く、特に起床時や外出時に悪化します。

鼻水・鼻づまり

水のように透明な鼻水が大量に出ます。症状が進行すると鼻づまりも併発し、呼吸がしづらくなります。

目のかゆみ・充血

目に強いかゆみや充血が起こり、涙目になることもあります。目をこするとさらに症状が悪化してしまい、結膜炎に発展する場合もあります。

喉や耳のかゆみ

喉や耳の奥がかゆくなります。喉のかゆみでは乾燥も伴うことが多く、異物感を感じやすくなります。

疲労感・頭痛

花粉症の症状が重くなると、体全体がだるく感じたり、頭痛が起きたりすることもあり、集中力が低下し、日常生活の質が損なわれます。

花粉症の原因

花粉症は、空気中を漂っている微細な花粉が鼻や目の粘膜に付着し、それに免疫システムが過剰に反応してしまうことが原因で起こります。通常、免疫システムはウイルスや細菌といった有害な病原体から体を守る働きをしますが、花粉症では、本来無害な花粉も異物と捉えて反応してしまいます。花粉症の主な原因には、下記のようなものがあります。

原因となる主な植物

日本ではスギ、ヒノキ、ブタクサ、ヨモギなどの花粉が主な花粉症の原因物質(アレルゲン)とされています。スギ花粉は2月から4月にかけて、ヒノキ花粉は3月から5月、ブタクサやヨモギの花粉は秋に多く飛散します。

遺伝的要因

両親が花粉症を持っている場合、その子どもが花粉症を発症する確率が高まるといわれています。

環境要因

大気汚染や住環境の変化も花粉症の発症リスクを高める要因となります。特に都市部では、車の排気ガスなどによって花粉が長く空気中に留まることがあり、花粉症の症状が悪化しやすいです。

花粉症の検査

花粉症の検査には次のようなものがあります。

血液検査

血液検査では、アレルゲンに対するIgE抗体の量を測定することで、体がどのアレルゲンに対して反応しているのかを調べます。

VIEW39

VIEW39は、血液中のIgE抗体の量を測定し、スギやヒノキ、ブタクサを含む39種類のアレルゲンに対する感受性を一度に検査できる先進的な検査方法です。広範囲にアレルゲンの反応を調べることで、どの花粉に対してアレルギー反応があるのかを判定することができます。

VIEW39について

ドロップスクリーン

ドロップスクリーンは、迅速にアレルゲン反応を確認できる簡易血液検査です。少量の血液を採取して、アレルギーの原因となる物質を特定できるため、患者様の負担が少なく、短時間で結果を得られるのが特長です。

ドロップスクリーンについて

プリックテスト

プリックテストは、皮膚にアレルゲンを少量塗布し、その部分を軽く針で刺して反応を確認する方法です。15〜20分後に皮膚が赤くなったり、かゆみを伴う場合、そのアレルゲンに対してアレルギーがあると判断されます。即時型アレルギーを確認するための標準的なテストです。

花粉症の治療

花粉症の治療法には、症状を和らげるための薬物療法と、アレルギーの根本的な改善を目指す免疫療法があります。患者様の症状の重さやライフスタイルに応じて、適切な治療法を提案します。

薬物療法

薬物療法では、主に下記の薬剤が使用されます。

抗ヒスタミン薬

花粉によるアレルギー反応を引き起こすヒスタミンの作用を抑える薬です。抗ヒスタミン薬は眠気を引き起こすことがありますが、最近では眠気の少ない第2世代の薬剤が主流となっており、改善されてきています。

ステロイド点鼻薬

ステロイド点鼻薬には、強い鼻づまりや炎症を抑える効果があります。局所的に作用するため、全身への副作用が少ないのが特徴です。

抗ロイコトリエン薬

炎症の原因となるロイコトリエンという物質の働きを抑える薬です。鼻づまりがひどい場合や、気管支喘息を併発している場合に効果を発揮します。

アレルゲン免疫療法(保険診療)

アレルゲン免疫療法は、花粉などのアレルゲンを少量ずつ体内に取り入れ、免疫システムを慣らしていくことで、アレルギー症状を根本的に改善する治療法です。長期にわたって継続して治療を行うことで、症状の軽減が期待されます。

舌下免疫療法

舌下免疫療法は、アレルゲンを含んだ薬を舌の下に数分間含み、徐々にアレルゲンを体内に取り入れる治療法です。自宅でも行えるため、患者様の負担が少なく、花粉症の根本治療として人気があります。スギ花粉やダニアレルギーに対して効果的です。

皮下免疫療法

皮下免疫療法は、医療機関でアレルゲンを少量ずつ注射する治療法です。定期的に通院する必要がありますが、免疫システムを強化し、アレルギー反応を減少させる効果が見込めます。

オマリズマブ(ゾレア)注射製剤

オマリズマブは、IgE抗体の働きを抑制することで、重度のアレルギー症状を軽減する注射薬です。他の治療法で効果が得られない重症の花粉症の場合に使用されることが多く、定期的に注射を受ける必要があります。

(参考文献)

一般社団法人 日本アレルギー学会「アレルギー疾患の手引き 2022年改定版」

厚生労働省「的確な花粉症の治療のために」

(監修者情報)

小谷 和弘

日本皮膚科学会 皮膚科専門医

厚生労働省指定 麻酔科標榜医

日本内科学会 認定内科医

皮膚科・小児皮膚科・美容皮膚科・アレルギー科

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