尋常性白斑
当院の尋常性白斑治療の特長
- ナローバンドUVBやエキシマレーザーを用いた先進的な光線療法(紫外線治療)を行い、皮膚へのダメージを抑えながら効果的に症状を改善します。
- 症状や生活スタイルに合わせて、エキシマレーザー治療を含む複数の治療法を組み合わせ、最適な治療プランを作成します。
- 尋常性白斑は経過を見ながら治療内容を調整していく必要がある疾患です。当院では、経験豊富な皮膚科専門医が経過を丁寧に診察し、効果を確認しながら治療を進めています。
尋常性白斑とは
尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)は、皮膚の色素(メラニン)を作る細胞であるメラノサイトが何らかの原因で破壊されたり機能を失ったりすることで、メラニンが作られなくなり皮膚に白い斑点が現れる後天性(生まれつきではなく成長してから発症する)の疾患です。「白なまず」と呼ばれることもあります。
国内での発症率は約0.5~1%とされており、性別や年齢に関係なく罹患する可能性がありますが、10~30歳代での発症が最も多いです。身体のどこにでもできますが、他の人にうつることはありません。
甲状腺疾患や悪性貧血、糖尿病などの合併症を伴うことがあり、特に甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症などの甲状腺疾患を同時に患うことが多いため、必要に応じて甲状腺機能に関する血液検査を行います。
白色粃糠疹(はたけ)や炎症後脱色素斑、老人性白斑などの似た症状の疾患が多くあり、その種類を判別することは難しいため、疑わしい症状がある場合は早めにご相談ください。
尋常性白斑の症状
尋常性白斑の特徴的な症状は、皮膚に境界が明瞭な白色の脱色素斑が現れることです。最初は親指の先くらいの大きさの白斑が数個できることが多く、症状が進行すると白斑が増えたり、大きくなったりします。通常、かゆみや痛みなどの自覚症状はありません。
白斑が毛の生えている部分に現れた場合、その部位のメラノサイト(色素細胞)が失われるため、毛も白くなることがあります。これは白毛化と呼ばれ、頭髪や眉毛、まつ毛、体毛などで起こります。白斑とともに白毛が確認される場合、治療による色素回復が難しくなるケースもあるため、早期に対処することが大切です。
尋常性白斑の種類
尋常性白斑は、白斑の分布や形態によって大きく3つのタイプに分類されます。多くの場合に該当するのが「非分節型」で身体の左右両側に現れ、進行性で再発することもあります。「分節型」は身体の左右どちらかのみに生じ、進行は早いものの症状が安定しやすい傾向があります。分節型、非分節型のどちらにも当てはまらない「分類不能型」には、限局型などの限定的な症状のものが含まれます。
非分節型
非分節型は、尋常性白斑の中で最も多くみられるタイプで、左右両側性(りょうそくせい)に白斑が現れるのが特徴です。進行性で、時間の経過とともに白斑が広がる傾向があります。汎発型や全身型など、さまざまなパターンがあります。
汎発型
全身型
指趾顔面型
粘膜型(2病変部以上)
混合型
分節型
分節型は非対称性の白斑で、身体の左右どちらかの神経支配領域に沿って現れることが特徴です。小児期に発症することが多く、発症初期は急速に進行しますが、その後安定化する傾向があります。病変部の毛髪も同時に白色化することが多いです。非分節型と比較して、進行や再発が少ないのが特徴です。
分類不能型
分類不能型は、非分節型・分節型のどちらにも明確に分類できない尋常性白斑を指します。白斑が1箇所~数箇所のみに限定して出現している、または粘膜のみに単独で生じているケースなどが該当します。白斑の診断では、進行性か非進行性かの判断が難しいことも多いため、初期の段階に一時的にこの分類に置かれることがあります。
限局型
粘膜型(1病変部のみ)
尋常性白斑以外の後天性の白斑
尋常性白斑以外にも、さまざまな原因により後天的に白斑が生じる疾患があります。これらは見た目が似ていることから混同されやすいため、正確な診断による鑑別が重要です。以下で代表的な4つの疾患を紹介します。
白色粃糠疹(はたけ)
白色粃糠疹(はくしょくひこうしん)は、主に小児の頬や腕に見られるうっすらとした白い斑で、乾燥した表面に微細な皮むけが見られるのが特徴です。かゆみなどの自覚症状は少なく、季節の変わり目や乾燥時期に多く発症します。乾燥や軽度の炎症が原因とされ、自然に治癒することも多いですが、保湿剤や日焼け止め、弱めの外用薬の使用により改善が期待できます。境界がぼんやりしていて、完全な脱色素ではなく淡色調であることが尋常性白斑との違いです。
炎症後脱色素斑
皮膚の炎症性疾患や外傷後に生じる脱色素斑です。湿疹や熱傷、外傷、虫刺されなどの治癒過程で、皮膚の色素が減少して白く見える状態です。色素を作るメラノサイトが一時的に機能低下することで起こりますが、時間の経過とともに徐々に色が戻ることが多いため、経過観察が基本になります。境界は比較的明瞭で、原因となった炎症の分布や形状により、不規則な形態を示すことが多いです。
老人性白斑
老人性白斑は、加齢と長年の紫外線曝露が原因で生じる白斑で、主に50歳以降の中高年にみられます。手の甲や前腕、すねなどに、境界が比較的はっきりした数ミリ〜1センチ程度の白い斑点が点在するのが特徴です。基本的に進行は緩やかで、健康上の問題はなく、治療の必要性は少ないとされています。
化学白斑
化学白斑は、化学物質への接触により生じる脱色素斑です。フェノール系化合物やハイドロキノン、過酸化水素などの薬品、ゴムや接着剤に含まれる成分が皮膚に接触することで、メラノサイトの機能に異常が起こり色素が失われた状態です。職業的な曝露や美容目的の薬剤誤用、消毒剤の使用により発症することがあり、接触部位に一致した分布を示します。原因物質を特定して使用を中止すれば進行を止められますが、一度生じた脱色素斑の回復は困難な場合が多いため、予防や化学物質を取り扱う際の適切な防護、発症時の早期受診が大切です。
先天性の白斑
これまでに説明してきた尋常性白斑や白色粃糠疹などは、成長してから現れる後天性のものでしたが、白斑には生まれつき存在する先天性のものもあります。先天性の白斑は、胎児期の細胞の分化異常やメラニン生成の先天的障害が原因となり、出生時または乳幼児期から確認されることが特徴です。以下では、代表的な先天性白斑の種類を紹介します。
眼皮膚白皮症
眼皮膚白皮症は、メラニン色素の合成に関わる遺伝子の欠損または異常により、皮膚や毛髪、眼のすべてにおいて色素が欠如する疾患です。出生時から全身の皮膚が非常に白く、頭髪は白色から茶褐色あるいは銀色、虹彩は青色や淡褐色となります。視力低下や羞明(しゅうめい、まぶしさに敏感)、眼振などの視覚障害を伴うことが多く、日光に対する感受性が極めて高いため容易に日焼けを起こし、皮膚癌のリスクが増加します。
脱色素性母斑
脱色素性母斑は、特定の部位のメラニン色素が生まれつき少ない、あるいは欠如している疾患で、境界の比較的はっきりした白斑が1ヵ所または数ヵ所に生じます。通常は出生時または乳児期に発見され、年齢とともに大きさが相対的に拡大して見えることもありますが、数や形状に大きな変化はないのが特徴です。
まだら症
まだら症は、おでこや生え際のところにできる白斑と白髪が特徴的な疾患で、体幹や四肢の中央寄りに左右対称性の白斑がみられることが多いです。白い部分の中に正常な皮膚の色の小さな点々が散らばっていることがあり、これがまだら模様に見えるため、まだら症と名付けられました。優性遺伝することが知られており、家族内に同様の所見を持つ人がみられる場合があります。
尋常性白斑の原因
尋常性白斑の発症には複数の原因が関係しており、現在でも完全には解明されていません。しかし、これまでの研究により、主に以下の原因が関与していると考えられています。
自己免疫の異常
現在、尋常性白斑の最も有力な原因とされているのが自己免疫の異常です。自己免疫とは、本来自分の体を守る免疫システムが誤って自分自身の細胞を攻撃してしまう状態です。尋常性白斑の場合では、免疫細胞が誤ってメラノサイトを異物と認識し、攻撃・破壊してしまうことで色素が作られなくなります。
遺伝的素因
尋常性白斑は遺伝的な体質とも関係があるとされています。家族に白斑や自己免疫疾患を持つ人がいる場合、発症リスクがやや高くなる傾向があります。ただし、特定の遺伝子が原因となる遺伝病ではなく、あくまで体質的な影響があるという程度で、必ずしも遺伝するわけではありません。
精神的ストレスや皮膚への刺激
尋常性白斑の発症や悪化のきっかけとして、強い精神的ストレスや、皮膚に対する慢性的な刺激や摩擦、外傷などが関与することもあります。また、紫外線や火傷、擦れなどの物理的刺激が白斑の出現部位に一致することがあり、これを「ケブネル現象(Koebner現象)」と呼びます。
尋常性白斑の治療
尋常性白斑の治療は、白斑の進行を止め、色素の再生を促すことを目的として行われます。現在のところ根本的な治癒法は確立されていませんが、適切な治療により症状の改善や進行の抑制が期待できます。治療法の選択は、年齢や、白斑の部位・範囲・活動性、発症からの期間などを総合的に考慮して決定されます。
外用薬
尋常性白斑において、外用薬は最も基本的な治療法のひとつです。特に症状が軽度の場合や、初期段階の白斑に有効とされています。
ステロイド
タクロリムス(プロトピック)
活性型ビタミンD3外用薬
配合剤
フロジン液
光線療法(紫外線治療)
光線療法(紫外線治療)は、白斑部に特定波長の紫外線を照射し、メラノサイトの活性化を促して色素を再生させる治療法です。患部の広さや部位に応じて照射方法が選ばれます。また、外用薬と併用することでより高い治療効果が期待できます。
PUVA療法
ナローバンドUVB
ナローバンドUVBは、紫外線の1種であるUVBの中でも、皮膚疾患に効果が認められている311~313ナノメートルという幅の狭い波長(ナローバンド)だけを照射する治療法です。週に1~2回の照射を継続することで徐々に効果が現れます。当院では全身型ナローバンドUVB照射器を導入しているため、広範囲の白斑に対して効果的に使用できます。副作用として軽度の日焼けのような赤みや色素沈着がありますが、一般的に安全性は高いとされています。治療期間は数ヵ月から1年以上かかり、定期的な照射が必要です。保険適用で受けられる治療方法です。
エキシマレーザー
エキシマレーザーは白斑の部分だけに集中して照射できる高出力の光線療法です。ナローバンドUVBが311~313ナノメートルという波長領域の紫外線を照射するのに対して、より治療効果が高い308ナノメートルの紫外線のみを患部に向けてピンポイントかつ強力に照射でき、正常な皮膚への影響を最小限に抑えながら、効率的に色素沈着を促進できます。
当院では、国内で唯一の薬事承認を取得したエキシマレーザー(※1)であるXTRACを完備しています。顔や手足の限られた範囲の白斑に特に有効で、比較的短期間で効果が現れることが多いです。照射時間が短いことも利点です。エキシマレーザーは、尋常性白斑に対して保険が適用されます。
外科的治療
外科的治療は、外用薬や光線療法で充分な効果が得られない場合に検討されます。正常な皮膚から採取した組織を白斑部分に移植することで色素の回復を図ります。自分の皮膚を移植する方法、小さな皮膚片を移植する方法、培養した色素細胞を移植する方法などがあります。症状によって適応となる場合は、適切な治療を行うことが可能な連携している大学病院をご紹介します。
(※1)2024年9月現在 皮膚疾患治療用として
- (参考文献)
- (監修者情報)
-
小谷 和弘
日本皮膚科学会 皮膚科専門医
厚生労働省指定 麻酔科標榜医
日本内科学会 認定内科医