ヘルペス(口唇・性器)
当院のヘルペス治療の特長
- ヘルペスの症状の早期改善のため、内服薬や外用薬を用いた治療を行っています。
- 高頻度で再発を繰り返す患者様に対しては、再発抑制療法をご提案しています。
- 海外でヘルペスの標準的な治療法になっている、PIT療法にも対応しています。
ヘルペスとは
ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)によって引き起こされる急性炎症性皮膚疾患です。ヘルペスウイルスには主に2つのタイプがあり、HSV-1は口唇ヘルペス、HSV-2は性器ヘルペスを引き起こすことが多いです。成人だけでなく、赤ちゃんや子どもでも感染します。ヘルペスには一度感染すると神経節細胞に潜伏し、免疫力の低下やストレスなどにより再発するという特徴があります。潜伏しているウイルスを完全になくす治療法は、現時点では確立されていません。
ヘルペスの症状
ヘルペスの症状は、感染した部位に応じて異なります。口唇ヘルペスと性器ヘルペスが代表的で、それぞれに特有の症状がみられます。
口唇ヘルペス
口唇ヘルペスは、主に唇周辺や口腔、目などの顔面、上半身に発症します。初期症状では、感染した部分にピリピリした痛みやかゆみが感じられ、その後小さな水疱が形成されます。水疱はやがて破れてかさぶたになり、通常は数週間ほどで自然に治癒します。初感染のときは免疫がまだできていないため、全身症状が出たり重症化しやすかったりします。再発のときは水疱は小さく、症状が出る範囲も狭くなります。1年に何度も症状が出る方もいれば、数年に1回ほどの方まで、再発する頻度はさまざまです。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは、性器やその周辺に水疱や潰瘍ができる感染症です。初感染の場合、発熱や倦怠感など全身症状を伴うことがあります。性器ヘルペスも再発しやすく、ストレスや免疫力の低下が再発の引き金となります。初期症状ではピリピリ、チクチクとした痛みやかゆみを伴い、その後、小さな赤い水疱が患部に集中して現れます。水疱の大きさは0.5~1cmほどで、互いに融合してびらんや潰瘍になる場合もあります。
ヘルペスを発症しやすいとき
- 仕事や学業が忙しくて疲労やストレスが蓄積しているとき
- 睡眠不足が続いているとき
- 風邪などで体調を崩したとき
- 季節の変わり目
ヘルペスの原因
ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染することで発症します。ヘルペスウイルスは一度体内に侵入すると、神経節に潜伏し、免疫力の低下などの要因で再活性化します。
ヘルペスの感染
ヘルペスウイルスには、感染者との直接接触または飛沫を受けることによって感染します。ヘルペスウイルスの感染力は強く、食器やタオルに付着していた口唇ヘルペスウイルスが家族や同居人に感染するケースも多くあります。また、自分の口唇ヘルペスに触れた手で目をこすることで、ヘルペス角膜炎を発症してしまうこともあります。
性器ヘルペスは性的接触によってうつり、コンドームを使用しない場合などに感染することが多いです。ヘルペスウイルスは症状が現れていない時期でも感染する場合があるため、注意が必要です。
ヘルペスの再発
ヘルペスは再発性のある感染症です。HSVウイルスは神経節細胞に潜伏し、普段は免疫によって抑えられていますが、疲労やストレスの蓄積、発熱、免疫力の低下、重度の日焼けなどが原因で免疫力が落ちたタイミングで再活性化します。
ヘルペスの治療
ヘルペスの治療では、ヘルペスウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を内服か外用で用いることが基本になります。なお、保険診療の関係で、抗ウイルス薬の外用薬は、抗ウイルス薬の内服薬と一緒に処方することはできません。
内服薬
ヘルペスの治療には、抗ウイルス薬の内服が有効です。内服薬は、ウイルスの増殖を抑え、症状の悪化を防ぎます。代表的な抗ウイルス薬としては、バラシクロビルやアシクロビル、ファムシクロビルがあります。これらの薬剤は、初期症状が現れた段階で早期に服用を開始することで症状を軽減し、治癒を早めることが可能です。また再発予防のために、長期の服用が推奨される場合もあります。
外用薬
外用薬もヘルペスの症状緩和に役立ちます。患部に直接塗布することで、水疱やかゆみを軽減し、治癒を促進します。代表的な外用薬としては、ビダラビン(アラセナ-A軟膏)や、ヘルペス角膜炎のケースではアシクロビル(ゾビラックス眼軟膏)があります。重症の場合には抗ウイルス薬を注射で投与することもあります。
PIT療法
PIT療法(Patient Initiated Therapy)とは、あらかじめ処方された薬剤を患者様自身が初期症状を判断して服用する治療方法のことをいいます。抗ヘルペスウイルス薬の錠剤(ファムビル・アメナリーフ)の処方を受け、ヘルペスの初期症状が出てすぐのタイミングで服用することで、治癒までの期間を短縮できます。
自分で再発の有無を判断でき、症状が軽度の方に向いている治療法です。ただし、再発の初期症状が現れた後6時間以内に服薬を開始できるなどの諸条件を満たす場合でなければ適応できません。
再発抑制療法
再発抑制療法は、1年に6回以上ヘルペス症状が再発するなど、頻繁に再発を繰り返している患者様に適応される治療法です。半年から1年ほどの長期にわたって毎日抗ウイルス薬を服用することで、ウイルスの活性化を抑制し、再発のリスクを軽減することができます。なお、再発抑制療法が保険適用されるのは性器ヘルペスのみです。それ以外のヘルペスの場合は自費診療になります。
- (参考文献)
- (監修者情報)
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小谷 和弘
日本皮膚科学会 皮膚科専門医
厚生労働省指定 麻酔科標榜医
日本内科学会 認定内科医