尋常性乾癬

当院の尋常性乾癬治療の特長

  • 当院では、従来のエキシマライトよりも高い効果を発揮するエキシマレーザーを使用して治療を行います。
  • 広範囲の皮疹には、全身型のナローバンドUVB療法を取り入れ、効率的な光線療法を実施します。
  • 必要に応じて、エキシマレーザーと全身型ナローバンドUVBを組み合わせ、症状に応じた最適な治療法を提供します。
  • オテズラ(内服薬)を併用することで、重症例や光線療法が難しい症例にも対応します。
  • 患者様の生活スタイルに合わせた長期的な治療計画を検討し、二人三脚で継続的な治療をサポートいたします。

尋常性乾癬とは

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)は、乾癬の一つです。乾癬にはいくつかの種類がありますが、尋常性乾癬が約80%を占めており、一般的に乾癬というと尋常性乾癬を指すことが多いです。日本人のおよそ300人に1人がかかる疾患で、中年の男性に多くみられるのも特徴です。

皮膚が赤くなり、盛り上がったところにフケのようなカサカサした白いかさぶたができます。大きさや形、数、分布はさまざまで、発疹が癒合して大きな病変を作る場合もあります。50%程度の患者さんにかゆみがみられます。爪が浮いたり、でこぼこと変形したりする症状や関節炎を併発することもあります。

尋常性乾癬の症状

尋常性乾癬では、皮膚が赤くなる紅斑(こうはん)、皮膚が盛り上がる浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)、銀白色のフケのような鱗屑(りんせつ)が付着して剥がれ落ちるなどの症状がみられます。頭皮や髪の生え際、肘、膝、臀部、太腿など、外部からの刺激を受けやすい部位で発症しやすいですが、それ以外の部位にも発疹が生じるケースがあります。爪がでこぼこと変形したり、浮いたりする症状が起こることもあります。

直径数mm程度の小さな発疹から始まり、次第に赤く盛り上がり、症状が広がっていきます。50%ほどの患者さんでかゆみを伴うことがありますが、患部を刺激すると症状を悪化させてしまう可能性があるため、皮膚をかいたり、こすったりしないようにしましょう。

紅斑

尋常性乾癬の皮膚では、炎症を起こす細胞が集まってさまざまな炎症を起こす物質を放出しているため、毛細血管が拡張したり充血したりして、皮膚が赤みを帯びた状態になります。

浸潤・肥厚

尋常性乾癬では、皮膚の細胞が正常な皮膚と比べて10倍以上のスピードで生まれ変わり、過剰に増殖しています。それにより皮膚が積み上がって盛り上がり、厚くなります。

鱗屑

盛り上がった皮膚の表面に銀白色のかさぶたができ、フケのように剥がれ落ちます(落屑)。

その他の乾癬の種類

尋常性乾癬以外の乾癬の種類には、次のようなものがあります。

乾癬性関節炎

乾癬によって関節に炎症が生じている状態を乾癬性関節炎といいます。手足の関節や背骨、アキレス腱や足の裏などに痛みや腫れ、こわばりなどが起きます。関節リウマチに似た症状ですが異なる疾患です。爪に乾癬の症状がある場合は、関節炎を起こしやすいといわれています。

滴状乾癬

直径0.5~2cm程度の小さな水滴状の発疹が全身に現れる疾患です。小児や若年層に多くみられます。風邪などの感染症がきっかけで起こることがあり、特に扁桃腺炎が原因となる場合が多いといわれています。原因となった感染症が治癒することで症状も治まりますが、まれに再発を繰り返し、尋常性乾癬に移行することもあります。

乾癬性紅皮症

尋常性乾癬が全身の90%以上に広がった症状を乾癬性紅皮症といい、発熱や悪寒、倦怠感などを伴います。乾癬性紅皮症には複数の原因が考えられますが、尋常性乾癬を放置したり、治療が不十分だったり、科学的根拠のない治療を行ったりした場合に発症することがあります。

膿疱性乾癬

膿疱性乾癬とは、皮膚の発赤とともに、膿の入った球状の袋(膿疱)が多く現れる疾患のことです。まれな疾患ですが、発熱や内臓の炎症などを伴うことがあるため、入院が必要になります。

尋常性乾癬の原因

乾癬の原因はまだ完全にはわかっていませんが、遺伝的要因にさまざまな環境要因(生活習慣やストレス、感染症や薬剤の使用など)が加わって発症するといわれています。また、糖尿病や脂質異常症、肥満なども影響すると考えられています。なお、乾癬は細菌やウイルスによる感染症ではないため、他の人にうつることはありません。

尋常性乾癬の治療

乾癬の治療では、外用療法、内服療法、光線療法を基本的に行い、これらで十分な効果がみられない場合に抗体療法を考慮します。尋常性乾癬は慢性的な皮膚疾患のため、その時々の症状を見極めながら、着実に治療を行っていくことが重要です。

外用薬

尋常性乾癬の治療で用いられる外用薬には、下記のようなものがあります。

ステロイド

乾癬の治療の中心となる外用薬です。炎症を抑制し、赤みやかゆみを抑える働きがあり、短時間で効果が現れますが、長期間使用し続けると皮膚が薄くなったり、皮膚の感染症を起こしやすくなったりする副作用に留意する必要があります。

活性型ビタミンD3

活性型ビタミンD3は、皮膚を作る機能が過度に活発化している状態を抑えます。外用を継続することで、きれいな肌の状態を保つステロイドの外用薬と同程度の効果がありますが、効果が出るまでに2~3ヵ月ほどかかります。長期間使い続けてもステロイドのような副作用が起きないのが特徴です。

配合剤

ステロイドと活性型ビタミンD3が配合された外用薬です。ステロイドの即効性と活性型ビタミンD3の長期的な効果の両方が期待でき、重ね塗りする手間がなく、1日1回の外用で良いため使いやすい薬です。

内服薬

症状が強く外用薬でコントロールできない場合や、患部が広範囲に及ぶ場合は内服薬を併用します。

シクロスポリン

シクロスポリンは免疫の働きを抑制する作用を持つ内服薬で、強力な効果を持ちます。肝障害や腎障害、高血圧などの副作用が起きることがあるため、服用中は定期的に血圧測定、血液検査、尿検査を実施します。

エトレチナート

ビタミンA類似物質で、皮膚の新陳代謝に欠かせない角化作用に対して影響を及ぼし、乾癬の治療にも効果があることが報告されています。効果が強い反面、中性脂肪の上昇や肝臓などへの負担、男女ともに内服中に子どもができると奇形が生じる危険性が大きく高まるなどの副作用が多くあるため、長期間服用を続ける場合は定期的な血液検査と診察を受ける必要があります。なお、現在はあまり使われていません。

アプレミラスト

炎症を引き起こす物質の産生に関与している、PDE4(ホスホジエステラーゼ4)という酵素の働きを阻害することで皮膚の炎症を抑える内服薬です。当院でおすすめしている薬剤です。副作用として、8割ほどに吐き気や下痢などの消化器官の症状、3割ほどに頭痛の症状が起こります。

JAK阻害薬

乾癬性関節炎の治療で用いられる内服薬です。現在のところ尋常性乾癬には適応がありません。JAK(ヤヌスキナーゼ)を阻害することで、乾癬性関節炎の病態に関わるサイトカインの働きを抑え、関節の炎症を鎮めます。副作用として、感染症や帯状疱疹が報告されています。なお、当院では

光線療法

乾癬の皮膚症状は、一般的に紫外線が強くなる夏の間に改善する傾向があることが知られています。光線療法はその紫外線の免疫反応を抑制する作用を活用する治療方法です。外用薬だけでは効果がみられないときや、発疹の面積が広範囲に及ぶ場合に選択されます。また、肝機能や腎機能の障害のため、内服薬による治療が行えない場合などでも使用できる安全性の高い治療です。

ナローバンドUVB

ナローバンドUVBは、尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎、円形脱毛症、尋常性白斑などの難治性の皮膚疾患に対して有効な保険適用の光線療法です。免疫の過剰な作用を抑える働きがあります。紫外線の1種であるUVBの中でも、皮膚疾患に効果が認められている311~313ナノメートルの幅の狭い波長(ナローバンド)のみを照射するため、紫外線による副作用を抑えることができ、小児や妊婦の方でも安心して受けられます。当院では、広範囲に症状がある尋常性乾癬に対して、全身型ナローバンドUVB照射器による治療を行っています。

ナローバンドUVBについて

エキシマライト

エキシマライトは、ナローバンドUVBと同様に、尋常性乾癬などの難治性の皮膚疾患を治療する光線療法の機器です。従来の光線療法よりも少ない回数で難治性の病変に効果が出やすいといわれています。ナローバンドUVBが311~313ナノメートルの波長領域の紫外線を照射するのに対し、より治療効果が高い308ナノメートルの紫外線のみを患部に向けて局所的かつ強力に照射でき、患部だけを安全性が高く効果的に治療することができます。

当院ではエキシマライトの進化版で、輝度を約55万倍にアップし、照射時間が3秒から0.5秒に短縮されたエキシマレーザーを用いる「XTRAC」を導入しています。エキシマライトと比較して、照射面積が小さいため無駄な照射がなく、余分な波長がないため色素沈着や紅斑反応などの副作用を抑えることができます。エキシマレーザーは、尋常性乾癬に対して保険が適用されます。

エキシマレーザーについて

抗体療法(生物学的製剤)

これまでに解説した治療方法で十分な効果が得られない場合に検討します。バイオテクノロジーの技術で作られた抗体製剤で、乾癬が発症する原因となるサイトカインという炎症物質をピンポイントで抑制します。皮下注射もしくは点滴注射を決められた定期的なスケジュールで受けます。多くの場合で高い効果を発揮しますが、安全性が高く使用するためには定期的に検査を受ける必要があります。また、初回の導入時には日本皮膚科学会が定める医療機関を受診する必要があります。患者様ごとのご事情に合わせて、適切な医療機関をご紹介します。

TYK2阻害薬(デュークラバシチニブ)

デュークラバシチニブは、2022年に適応になったTYK2阻害薬です。JAKと同じ分子ファミリーであるTYK2(チロシンキナーゼ2)を阻害することで、乾癬の発症に関与するサイトカインの働きをブロックします。初回に導入する際は、スクリーニング検査のため総合病院を受診する必要があります。患者様ごとのご事情に合わせて、適切な病院をご紹介します。


(参考文献)

乾癬治療のピラミッド計画

日本皮膚科学会「乾癬の光線療法ガイドライン」

日本皮膚科学会「乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)」

(監修者情報)

小谷 和弘

日本皮膚科学会 皮膚科専門医

厚生労働省指定 麻酔科標榜医

日本内科学会 認定内科医

皮膚科・小児皮膚科・美容皮膚科・アレルギー科

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