蕁麻疹(じんましん)

当院の蕁麻疹治療の特長

  • 患者様の症状に応じて、抗アレルギー薬の投薬量を細かく調整し、症状の安定化を図ります。
  • 必要に応じて、H2ブロッカーを併用し、より効果的な蕁麻疹のコントロールを目指します。
  • アレルギー検査を実施し、蕁麻疹の原因を特定し、それに基づいた治療計画を立てます。
  • 症状の緩和をサポートするために、外用薬を補助的に処方し、治療効果を高めます。
  • 重症例では、複数の薬を組み合わせた治療を行い、必要に応じて抗体療法も実施しています。

蕁麻疹とは

蕁麻疹(じんましん)とは、皮膚の一部に赤い盛り上がり(膨疹)が突然現れ、それが出現と消退を繰り返す疾患で、ほとんどの場合でかゆみを伴います。通常、個々の膨疹は数時間~24時間で痕を残さずに消えるのが特徴です。重症の場合や長引く場合は、抗アレルギー薬の内服などによって症状を抑える治療を行います。

膨疹の大きさは1~2mmほどのものから、手足全体に及ぶものまでさまざまです。個々の膨疹が融合する場合もあります。形も円形や楕円形、線状や地図状など多様ですが、膨疹の形が病態に関与することはほぼありません。

蕁麻疹は非常によくみられる疾患で、15~20%の人が一度は経験するといわれています。
なお、蕁麻疹は受診される際には症状が消退していることがあるため、皮膚症状の写真を撮影して、受診時に医師に見せてもらえると診断の助けになります。

蕁麻疹の症状

蕁麻疹の代表的な症状は、突然身体の一部に現れる、かゆみを伴う皮膚の盛り上がりや赤みです。盛り上がりの形は、1~2mmの円形や楕円形から、10cm以上の地図上のものまでさまざまです。患部をかくと赤いミミズ腫れができ、さらにかゆみが増してしまいます。中には、かゆみだけでなく、チクチクとした痛みや焼けるような痛みを感じることもあります。

蕁麻疹の症状の大半は皮膚に出現しますが、まれに喉の粘膜が腫れて、声がかすれたり、悪化して呼吸困難などになったりする場合もあります。夕方から夜間にかけて発症することが多く、翌朝には跡形もなく消えていることがほとんどです。一度症状がなくなったとしても別の部位に新しく膨疹が現れたり、出現する範囲が広がったりして、数ヵ月間症状が続くことがあります。

蕁麻疹の原因と種類

蕁麻疹は、皮膚にある細胞からヒスタミンというかゆみを引き起こす物質が何らかのきっかけで放出されて、毛細血管が広がって赤みが生じ、血液の中の血漿成分が血管の外に漏れ出て皮膚を盛り上げることで発症するといわれています。

蕁麻疹の原因には、特定の食物や薬品などに対するアレルギーや他の疾患が関与しているものもありますが、大抵の場合は直接的な原因を特定することは困難です。蕁麻疹の分類は必ずしも明確ではありませんが、発症する仕組みや現れ方などの違いにより、下記のように分けることができます。

特発性の蕁麻疹

原因を特定できない蕁麻疹のことを、特発性の蕁麻疹といいます。7割以上の蕁麻疹がこのタイプに属するといわれています。症状が続く期間によって、急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹に分けられます。

急性蕁麻疹

繰り返し症状が出現する蕁麻疹で、最初の症状が出始めてから1ヵ月以内のもの。細菌やウイルス感染などが原因となっている場合が多く、子どもが風邪に伴って発症することがあります。

慢性蕁麻疹

症状が1ヵ月以上続いている蕁麻疹です。原因が特定できないことが多いです。数ヵ月~数年間にわたって症状が続くケースもあります。

刺激誘発型の蕁麻疹

特定の刺激や負荷によって引き起こされる蕁麻疹を、刺激誘発型の蕁麻疹といいます。刺激が加わる頻度によって症状が1日に何度も出ることもあれば、しばらく出ないこともあります。

物理性蕁麻疹

皮膚への機械的な摩擦や圧迫、寒冷刺激や温熱刺激、日光曝露、水との接触などの物理的刺激によって起こる蕁麻疹です。

コリン性蕁麻疹

入浴や運動、精神的な緊張によって体温が上がり、発汗することで現れる蕁麻疹です。かゆみもしくはピリピリとした痛みと、直径1~5mm程度の小さな膨疹を伴うことが特徴です。膨疹のまわりを赤み(紅斑)が取り囲むことが多いですが、逆にまわりが白くなることもあります。症状が現れてから、数分~1時間以内に自然に膨疹は消退します。小児~20歳代で発症することが多く、歳をとるほどに症状が軽くなります。

接触蕁麻疹

特定の物質に皮膚や粘膜が触れることで起こる蕁麻疹です。通常は原因物質に接触した後、数分~数十分以内に触れた部位に膨疹が現れ、数時間以内に消退します。まれに、数時間後に膨疹が出現したり、他の部位に膨疹が拡大することがあります。

アレルギー性蕁麻疹

食べ物や薬剤、植物などに含まれる特定の物質(アレルゲン)に反応して生じる蕁麻疹です。通常はアレルゲンに暴露してから数分~数時間以内に症状が現れます。アレルゲンとして疑わしい食品や、その食品のエキスなどを使用した皮膚検査、または血液検査により比較的簡単に原因を確認することができます。

非アレルギー性蕁麻疹

青魚や肉類、タケノコ、ほうれん草などで起こる蕁麻疹です。同じ食品を食べても、食べ方や量、その日の体調などによって症状が出たり出なかったりするため、皮膚や血液による検査では原因を突き止めることができません。

イントレランス

アスピリンなどの非ステロイド系消炎鎮痛薬、人工食品着色料、造影剤、食品中のサリチル酸や防腐剤などによって引き起こされる蕁麻疹です。

血管性浮腫(クインケ浮腫)

口唇やまぶたなどが赤く腫れあがり、2~3日かかって消える蕁麻疹です。かゆみは伴わず、痛みを感じることがあります。通常の蕁麻疹と合併して出現する場合もあります。手や腕、足などに生じることもあります。

蕁麻疹の検査

通常、蕁麻疹の病型は皮疹や経過などから高確率で診断できるため、一部の場合を除いて特別な検査は必要ありません。また慢性蕁麻疹の場合は、検査をしても原因を突き止められないケースがほとんどです。
アレルギー性蕁麻疹や物理性蕁麻疹などが疑われる場合は、アレルギー検査や誘因となる物理的な刺激を実際に加えて蕁麻疹が生じるか確認するテストを行うこともあります。
なお当院では、39項目のアレルギー検査が一度の採血で行える「View39」という血液検査を実施しています。医師によってアレルギー症状があると認められた場合は保険が適用される人気のある検査です。

アレルギー検査について

蕁麻疹の治療

蕁麻疹の治療の基本は、原因・悪化因子の除去・回避と、抗ヒスタミン薬を中心とした内服薬による薬物療法です。これらを病型や個別の症例に応じて実施します。なお、蕁麻疹の治療では、外用薬は通常効果を期待できません。

原因・悪化因子の除去・回避

皮疹の診察、食べたものや常用薬、受けた刺激、既往症などについての問診を行い、必要に応じて血液検査やアレルギー検査をして、直接的な原因や蕁麻疹の病型を探ります。診察や検査によって特定の原因物質や刺激がわかった場合は、それらを除去するか避けて生活するようにします。

内服薬

蕁麻疹の治療で用いられる内服薬には次のようなものがあります。

抗アレルギー薬・
抗ヒスタミン薬

蕁麻疹にはさまざまな種類がありますが、大半が細胞から放出されたヒスタミンが血管や神経に働くことで症状が現れます。そこでそのヒスタミンの作用を抑制するために、抗ヒスタミン薬もしくは抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬を服用します。1種類の薬で効果が得られない場合は、他の薬を併用したり、補助的治療薬を追加したりします。蕁麻疹の種類によらず効果が期待できる治療方法です。

ステロイド内服

蕁麻疹によって、日常生活に支障が出るほどの強いかゆみが出ているケースでは、短期間ステロイドの内服を行う場合があります。

注射薬

一般的な治療で蕁麻疹をコントロールできない場合に、オマリズマブの注射製剤による治療を行うことがあります。

オマリズマブ

オマリズマブは元々は気管支喘息の治療に使用されていた薬ですが、難治性の蕁麻疹にも有効だとわかり、保険適用の対象になりました。既存の薬で蕁麻疹の症状が改善しないときに使用することができます。インフルエンザのワクチンなどを打つように、腕などに皮下注射します。抗ヒスタミン薬が細胞から放出されたヒスタミンをブロックするのに対して、オマリズマブにはヒスタミンを産み出すIgEと細胞の結合を阻害する作用があるため、より反応を抑える効果があるといえます。

免疫抑制剤

免疫抑制剤は、抗ヒスタミン薬などによる治療を行っても蕁麻疹の症状に改善がみられず、患者さんの生活の質(QOL)が低下している場合や、既存の薬の副作用などで他の治療方法が必要な場合に使用されることがあります。

シクロスポリン

シクロスポリンは、免疫の調整がうまく働かないことで起こる皮膚炎疾患などに使用されます。既存の治療でコントロールできない成人の最重症・難治症例に対してのみ使え、断続的に使用することはできますが、使用を開始もしくは再開してから3ヵ月以内に休薬する必要があります。蕁麻疹の治療においては保険が適応されないため、自費診療になります。また、高血圧や腎機能障害を引き起こす場合があるので、定期的に血圧測定と血液検査を受ける必要があります。

漢方薬

慢性蕁麻疹などの治療の際に、補助的に漢方薬が用いられることがあります。乳児や高齢者にも使用でき、副作用が少ないという利点があります。


(参考文献)

蕁麻疹診療ガイドライン 2018

蕁麻疹の診断と治療

(監修者情報)

小谷 和弘

日本皮膚科学会 皮膚科専門医

厚生労働省指定 麻酔科標榜医

日本内科学会 認定内科医

皮膚科・小児皮膚科・美容皮膚科・アレルギー科

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