手湿疹(手荒れ)

当院の手湿疹治療の特長

  • スタッフにより、薬の正しい塗り方を丁寧に指導します。
  • 同時に保湿や再発予防のためのケア方法をしっかりとご案内します。
  • 強いかゆみなどの症状がある場合は、適宜内服薬も併用して治療いたします。
  • アトピー性皮膚炎などで重症のケースでは、光線治療等を積極的に組み合わせて治療します。

手湿疹(手荒れ)とは

手にできる湿疹を手湿疹といいます。手に触れる物質の刺激やアレルギーによって炎症が起き、湿疹が生じます。洗剤や水を多く使用する調理師や美容師、炊事や洗濯など水仕事をすることが多い主婦の方などに多い病気のため、主婦湿疹とも呼ばれます。

乾燥肌やアレルギー体質、アトピー性皮膚炎の方は、皮膚のバリア機能が弱っていることで手湿疹を起こしやすいとされています。

かゆみが強いことが多く、かきむしることで悪化するため、早期にかゆみ治療を行う必要があります。治療が終わった後も、正しいケアを続けて再発を予防することが大切です。

手湿疹の症状

手湿疹にはさまざまな症状があり、皮膚の状態ごとに下記のように分類されます。

角化型手湿疹

中高年の男性に多くみられる症状で、手のひらの皮が固くなったり、ボロボロと剥がれ落ちたり、ひび割れが生じたりします。 赤みや小水疱はみられません。明確な原因は不明なことが多いです。

進行性指掌角皮症

指先や指の腹が乾燥してガサガサになります。利き手の親指や人差し指、中指に多く、指紋がなくなって、ひび割れを伴う場合もあります。物理的に指先を酷使する方や、水に触れることの多い方にみられる症状です。

貨幣状型手湿疹

手の甲に貨幣ほどの大きさの円形の湿疹ができ、強いかゆみを感じます。化学薬品などによるアレルギー性接触皮膚炎、アトピー型手湿疹などで現れる症状です。

再発性水疱型・汗疱型手湿疹

手のひらや足の裏、手足の指の側面に、2~5mmほどの大きさの水ぶくれが多発し、強いかゆみを伴う症状です。進行すると湿疹が増悪して、赤みがみられるようになることもあります。汗の影響もあり、夏に悪化する傾向があります。

乾燥・亀裂型手湿疹

手のひら、指全体の乾燥とひび割れが特徴の慢性手湿疹です。通常、小水疱は伴いません。皮膚のバリア機能が低下することで引き起こされるともいわれています。乾燥の影響もあるため、冬に増悪する傾向があります。

手湿疹の原因

通常、皮膚は皮脂膜という保護膜によってさまざまな刺激から守られていますが、手のひらには皮脂を分泌する皮脂腺がなく、代わりに皮膚表面の角質層を厚くすることで手を保護しています。しかし頻繁に水仕事をしたり、摩擦や刺激を受けたりすると、いくら厚い角質層でもそのバリア機能は弱まってしまいます。その結果、皮膚がカサカサと乾燥してかゆみが生じ、ひどくなると炎症や亀裂が起こりやすくなります。

手湿疹はその発症原因の仕組みから、主に次の4つのタイプに分類されます。

外からの刺激

手湿疹の7割を占める、最も多いタイプです。皮膚の乾燥やガサガサ、軽度の赤みから症状が始まることが多い、いわゆる手荒れです。刺激が強かったり、長期にわたって刺激を受けると、湿疹のような赤みや小水疱がみられることもあります。利き手の指先や手のひら、爪の周囲などで発症する頻度が高くなります。

化学物質によるアレルギー

化学物質によるアレルギーが原因の手湿疹は、外からの刺激によるものよりも、かゆみや赤み、小水疱の程度が強い傾向にあります。また、アレルギー物質が接触した部分から症状が始まるため、親指や指先、手の甲に発症することが多いです。手首や前腕に生じることもあります。原因となる物質は、洗剤や染髪剤、金属やゴム製品、植物などです。薬品に触れる機会の多い、理容師、美容師、看護師や調理師などの方が発症する割合が高いです。

タンパク質抗原によるアレルギー

タンパク質抗原によるアレルギーが原因の手湿疹は、前述した化学物質によるものとはメカニズムが異なる接触皮膚炎です。手の皮膚に触れた肉や魚、野菜や果物、乳製品などの食品や動物、花粉といったタンパク質抗原に対してアレルギー反応を示し、蕁麻疹と痒みを引き起こします。食品を扱う方に多くみられます。

アトピー型手湿疹

アトピー性皮膚炎をお持ちの方は皮膚のバリア機能が低下しているので、外からの刺激によって手湿疹が起きやすくなっています。手首から手の甲、指の背側などに発生し、慢性化することが多いです。さらに、自身の持つ花粉やダニなどのアレルゲンに触れると、タンパク質抗原によるアレルギーが原因の手湿疹も加わり、悪化してしまいます。

手湿疹に似た疾患

手湿疹に似た疾患には下記のようなものがあります。

手白癬

手白癬(てはくせん)はいわゆる水虫の一種で、白癬菌というカビが皮膚に感染し増殖することで起こる疾患です。片手にだけ発症することが多いです。自身がかかっている足白癬から手に感染することで発生するため、足の水虫を治療しておけばかかることはありません。かゆみはあまり強くなく、全体的に手の皮膚が厚く硬くなることが多いです。足白癬は通常外用薬で治療しますが、手白癬で治りにくいケースでは内服薬を使用することもあります。

掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は、手のひらや足の裏に小さな水疱や膿が繰り返し多発する疾患です。鎖骨や胸骨に関節炎による痛みが起こることもあります。原因は解明されていませんが、喫煙や齲歯(むしば)、銀歯による金属アレルギー、ストレス、扁桃炎などの要因が関与しているといわれています。細菌やウイルスが原因ではないため、感染することはありません。

皮膚筋炎

主に皮膚と筋肉に炎症が起きる病気です。皮膚症状がない場合は多発性筋炎と呼ばれますが同一疾患です。手の指関節の背面にガサガサとした赤みが生じます。また、機械工の方の手指の横側に起きる職業変化に似た、ガサガサした赤みの症状を伴うことも知られています。

手湿疹の治療

手湿疹の治療の基本は、原因となる物質やアレルゲンを回避することです。そのうえで、ステロイドなどの外用薬で治療を行います。多くの場合、2~4週間ほどで改善しますが、かゆみが強いなど症状によっては抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬の内服を併用します。それでも効果がみられない場合は、免疫抑制剤やステロイドの内服、光線療法を用いることもあります。

外用薬

手湿疹の治療で使用する外用薬には次のようなものがあります。

ステロイド

手湿疹の治療の中心となる基本的な外用薬です。かゆみや炎症の程度、薬に対する反応をみながら、ステロイドの強さを調節していきます。傷になっていたり、膿んだりしている場合は、抗生物質が配合されたステロイド外用薬を用いることもあります。ステロイド外用薬は手湿疹・手荒れを完治させるための薬ではなく、炎症を抑えるための対処療法的な薬であることも理解しておきましょう。症状がなくなった後も、刺激に対する防御対策と適切なスキンケア、保湿を続けることが大切です。

タクロリムス

タクロリムスは、身体の過剰な免疫反応を抑制することで、かゆみや炎症を抑える外用薬です。手湿疹の強いかゆみが落ち着いてきたり、ステロイドの使用が長期に及んできたりした場合に、ステロイドからの変更を検討します。有効成分の分子量が大きいため、皮膚状態が悪い部分からは吸収されますが、正常な部分からはほとんど吸収されないという特徴があります。炎症が強い状態に用いると強い刺激感があるため、維持期に使用することが多いです。

JAK阻害薬

炎症性サイトカインによる刺激が細胞内に伝達されるときに必要な、JAK(ヤヌスキナーゼ)という酵素を阻害する薬です。ステロイドの外用により手湿疹の症状が落ち着いてきた場合に、ステロイドからの変更を考慮します。タクロリムスの外用時に生じるような刺激感が起こりにくいといわれています。

保湿剤

手湿疹の治療では、保湿剤を使って皮膚の乾燥を防ぎ、刺激から守ることが大切です。手を洗うたびに保湿剤をなるべく塗るようにしましょう。皮膚のバリア成分を補いながら保湿することが、手湿疹の治療と予防につながります。症状に応じて、ワセリンや亜鉛華軟膏、尿素クリーム、ヘパリン類似物質などの中から選択します。

内服薬

手湿疹のかゆみが強く、ついかいてしまう、夜中にかきむしってしまうなどの症状によっては、内服薬を併用する場合があります。

抗アレルギー薬・
抗ヒスタミン薬

抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬は、手湿疹のかゆみを抑えるために補助的に内服します。長期間の使用でも安全性が高いです。

シクロスポリン

過剰に起こっている異常な免疫反応を抑制する薬です。職業性の接触皮膚炎などで原因を取り除くことが困難、かつ一般的な治療では効果がない重症患者さんで、日常生活に支障をきたしている場合に考慮されることがあります。なお現在のところ、手湿疹を含む接触皮膚炎に対するシクロスポリンの保険適用はありません。

ステロイド内服

難治性の手湿疹の場合に投与を考慮することがあります。効果は強いですが、副作用のため、内服は短期間のみにとどめる必要があります。

漢方薬

一般的なステロイド外用や保湿による手湿疹の治療で効果がみられない場合でも、漢方薬の使用で改善がみられるケースがあります。

光線療法

光線療法は、外用薬で手湿疹の症状をコントロールできない場合に外用治療と併用します。肝臓や腎臓の障害で、内服薬による治療が行えない場合などでも用いることができる安全性の高い治療です。

ナローバンドUVB

アトピー型手湿疹の場合や皮疹が広範囲で生じている場合に使用することがあります。紫外線の1種であるUVBの中でも、皮膚疾患に効果が認められている311~313ナノメートルの幅の狭い波長(ナローバンド)だけを照射するため、紫外線による副作用を抑制することができ、小児や妊婦の方でも安心して受けられます。当院では、全身型ナローバンドUVB照射器を採用しています。

ナローバンドUVBについて

エキシマライト

一般的な治療で手湿疹が治りにくい場合に、症状の悪い部分だけに当てることのできるエキシマライトが有効なことがあります。ナローバンドUVBが311~313ナノメートルという波長領域の紫外線を照射するのに対して、より治療効果が高い308ナノメートルの紫外線だけを患部に向けて局所的かつ強力に照射でき、患部のみを安全性が高く効果的に治療することが可能です。

当院ではそのエキシマライトの進化版で、輝度を約55万倍に高め、照射時間が3秒から0.5秒に短縮されたエキシマレーザーを用いる「XTRAC」を完備しています。エキシマライトと比べて、照射面積が小さいため無駄な照射がなく、余分な波長がないため色素沈着や紅斑反応を抑えることができます。指の間などの狭い部位にも照射が可能です。

エキシマレーザーについて


(参考文献)

日本皮膚科学会「手湿疹診療ガイドライン」

(監修者情報)

小谷 和弘

日本皮膚科学会 皮膚科専門医

厚生労働省指定 麻酔科標榜医

日本内科学会 認定内科医

皮膚科・小児皮膚科・美容皮膚科・アレルギー科

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