粉瘤(アテローム)
当院の粉瘤治療の特長
- 粉瘤は良性腫瘍ですが、化膿したり不快な臭いが生じたりする可能性があるため、当院では早期の切除を推奨しています。
- 粉瘤の切除は、日帰り手術で行っています。これまでに5,000件以上の皮膚外科手術の実績を持つ院長が責任を持って執刀します。
- 手術前に麻酔科標榜医の資格を持つ医師が麻酔の局所注射を行い、痛みを感じないようにしてから手術します。
- ご希望により局所麻酔注射の前に麻酔テープを使用し、注射による痛みも軽減しています。
- クリーンな手術室で安全性の高い手術を行い、傷痕やダウンタイムを最小限に抑えることを徹底しています。
粉瘤とは
粉瘤(ふんりゅう)は、皮膚の下にできるできものの一種で、アテローム(atheroma)とも呼ばれています。一般的に良性のできものですが、放置すると大きくなったり、感染したりする可能性があるため、早めの治療がおすすめです。
粉瘤の症状
粉瘤の症状は種類や発生部位によって多少異なりますが、一般的には皮膚の下に丸くて柔らかいコブができるのが特徴です。多くの場合、痛みはありませんが、感染すると炎症を起こし、痛みや発赤、腫れなどの症状が現れることがあります。
粉瘤は、徐々に大きくなることもあり、時には数センチメートルにまで達することもあります。表面の皮膚は正常な色を保っていることが多いですが、感染すると赤みを帯びたり、熱を持ったりすることがあります。また、粉瘤が大きくなると、皮膚が薄くなり、内容物が透けて見えることもあります。
粉瘤の種類
粉瘤には、いくつかの種類があります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
表皮嚢腫
表皮嚢腫は、最もよく見られる粉瘤のタイプで、皮膚の表面にある角質や毛髪などが毛穴に詰まることが原因で発生します。嚢腫の壁は皮膚の表面と同じ細胞でできており、内部には古い角質などが溜まっています。
表皮嚢腫は、通常、1つだけできるのが特徴で、ゆっくりと大きくなっていきます。大きさは数ミリから数センチまで様々で、できものの中心に毛穴の開口部が見えることもあります。
表皮嚢腫は、けがをしたり感染したりすると炎症を起こすことがあり、その場合は痛み、赤み、腫れなどの症状が現れます。炎症を繰り返すと、できものから皮膚の表面に管のような通り道(瘻孔)ができることもあります。
外毛根鞘性嚢腫
外毛根鞘性嚢腫は、毛穴の一番外側の層である外毛根鞘から発生する粉瘤です。外毛根鞘は、毛穴の入り口から毛の根元までを取り囲んでいる層のことで、外毛根鞘性嚢腫はこの外毛根鞘の一部が風船のように膨らむことで形成されます。嚢腫の壁は毛穴の構造に似ており、毛が含まれていることが多いのが特徴です。
外毛根鞘性嚢腫は、表皮嚢腫と比べて、皮膚のより深いところにできることが多く、炎症を起こしやすい傾向があります。炎症がひどくなると、膿がたまってできものが大きくなったり、瘻孔ができたりすることがあります。
多発性毛包嚢腫(脂腺嚢腫)
多発性毛包嚢腫は、たくさんの小さな粉瘤が集まってできるタイプの粉瘤で、毛穴に付属する脂肪分を分泌する腺である脂腺から発生するため、脂腺嚢腫とも呼ばれます。多発性毛包嚢腫は、毛穴と脂腺の異常が原因で生じると考えられており、家族内で遺伝することがあります。
見た目の特徴としては、大小様々なできものが多数できて、それらが合体することで不規則な形になることもあります。それぞれのできものは、表皮嚢腫や外毛根鞘性嚢腫と似ていますが、より小さく、数が多いのが特徴です。
多発性毛包嚢腫は、炎症を繰り返すことが多く、傷跡ができたり、瘻孔ができたりすることもあります。また、まれに悪性腫瘍を合併することがあるため、注意が必要です。
粉瘤のできやすい場所
粉瘤は体のさまざまな部位にできる可能性がありますが、特に毛穴が多く、皮脂腺が発達している場所に発生しやすいと言われています。頭皮や顔面、特に目の周り、鼻、頬、耳の後ろなどは粉瘤ができやすい部位です。また、首、胸、背中、お尻、太ももなども粉瘤が発生しやすい場所として知られています。
これらの部位は、毛穴が多いだけでなく、外からの刺激を受けやすいという特徴もあります。例えば、頭皮や顔面は、日光や化粧品などの影響を受けやすく、首や胸、背中は、衣服との摩擦が起こりやすい部位です。お尻や太ももは、座ったり歩いたりする際に圧力がかかる場所でもあります。
粉瘤の見分け方
粉瘤は、一般的に皮膚の下にできる丸くて柔らかいコブのようなできものとして知られていますが、他の皮膚疾患と間違えやすいこともあります。粉瘤を正しく見分けるためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。
まず、粉瘤は通常、皮膚の表面から隆起したできものとして現れます。触れてみると、柔らかく、可動性があるのが特徴です。大きさは数ミリから数センチまで様々で、徐々に大きくなっていく傾向があります。粉瘤の表面の皮膚は、通常は正常な色をしていますが、感染すると赤みを帯びたり、熱を持ったりすることがあります。
粉瘤の中心部には、毛穴の開口部が見られることがあります。これは、粉瘤が毛穴に詰まった角質などを起源としているためです。ただし、すべての粉瘤にこの特徴があるわけではありません。
粉瘤を見分ける上で重要なのは、できものの経過を観察することです。粉瘤は、一般的にゆっくりと成長し、自然に消えることはありません。時間が経つにつれて大きくなり、炎症を繰り返すことがあります。炎症を起こすと、痛み、発赤、腫れなどの症状が現れます。
また、粉瘤は特定の部位にできやすいという特徴もあります。頭皮、顔面、首、胸、背中、お尻、太ももなどは、粉瘤ができやすい場所として知られています。
粉瘤に似た疾患
粉瘤と似たような症状を示す疾患はいくつかあります。適切な治療のために、これらの疾患を正しく見分けることが重要です。
脂肪腫
脂肪腫は、脂肪細胞が増殖することで発生するできもので、粉瘤と同じように皮膚の下に柔らかいコブのようなものとして現れます。ただし、脂肪腫は粉瘤と比べて可動性が高く、皮膚との癒着が少ないのが特徴です。また、脂肪腫は成長が遅く、痛みを伴うことは少ないです。
ニキビ
ニキビは、毛穴に皮脂や角質が詰まることで発生するできものです。ニキビは思春期に多く見られ、顔や胸、背中など皮脂腺が多い部位にできやすいのが特徴です。粉瘤よりも小さく、表面に白や黒の頭が見られることが多いです。
イボ
イボは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって発生する小さなできものです。イボは、手や足、顔などに多く見られ、表面がざらざらしていたり、カリフラワー状になっていたりします。イボは、粉瘤とは異なり、表面が角質化しているのが特徴です。
せつ(おでき)・よう
せつ(おでき)は、毛穴や皮脂腺が細菌に感染することで発生する炎症性のできものです。おできは、粉瘤と比べて痛みを伴うことが多く、できものの中心部に膿が溜まっていることがあります。ようは、おできが化膿して膿が皮膚の表面に出てきた状態を指します。
リンパ節腫脹
リンパ節腫脹は、リンパ節が何らかの原因で腫れる状態を指します。リンパ節は、首、脇の下、鼠径部などに存在し、感染症や悪性腫瘍などによって腫れることがあります。リンパ節腫脹は、粉瘤のようにできものとして触れることができますが、リンパ節の位置に一致して現れ、通常は圧痛を伴うのが特徴です。
石灰化上皮腫
石灰化上皮腫は、表皮細胞が増殖し、石灰化することで発生するできものです。石灰化上皮腫は、頭皮や顔面、手足などに多く見られ、表面が硬く、時に痛みを伴います。石灰化上皮腫は、粉瘤と同様に皮下のしこりとして触れることができますが、表面の性状が硬いことで区別できます。
臀部慢性膿皮症(化膿性汗腺炎)
臀部慢性膿皮症は、お尻や太ももの付け根などに発生する慢性の化膿性疾患です。臀部慢性膿皮症は、汗腺が細菌に感染することで発生し、皮膚が赤く腫れ上がり、膿が溜まることがあります。臀部慢性膿皮症は、粉瘤のようにお尻や太ももの皮下にしこりを形成しますが、炎症に伴う痛みや発赤が特徴的です。
粉瘤の原因
粉瘤は主に毛穴に角質や皮脂などが詰まることで発生します。毛穴から古い角質や皮脂が排出されずに詰まってしまうと、粉瘤ができることがあります。
粉瘤の発生には、ホルモンバランスの変化、遺伝的な要因、外的な要因、ストレスなどが関与していると考えられています。思春期や妊娠中、更年期などのホルモンバランスが変化する時期には、皮脂の分泌量が増加し、毛穴に詰まりやすくなります。また、粉瘤ができやすい体質の人もいます。
ただし、粉瘤の正確な発生メカニズムは完全には解明されていません。予防には日々の清潔を保つことや、バランスの取れた生活習慣が大切ですが、それでも粉瘤ができてしまうことはあります。粉瘤ができたら、早めに皮膚科医に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
粉瘤の治療
粉瘤の治療には、主に外科的な方法が用いられます。粉瘤は自然に治ることはないため、できものを取り除く必要があります。
くりぬき法
くりぬき法は、粉瘤の内容物を取り除く方法です。局所麻酔を使用し、粉瘤の上から小さな切開を加えて、中身を絞り出すように取り除きます。
くりぬき法は、比較的小さな粉瘤に対して行われることが多く、手術時間も短く、傷跡も目立ちにくいのが特徴です。ただし、くりぬき法では、嚢胞壁を完全に取り除けない場合があり、再発することがあります。
全摘出手術
全摘出手術は、粉瘤を袋(嚢胞壁)ごと完全に取り除く方法です。局所麻酔を使用し、粉瘤の上の皮膚を切開して、粉瘤を丸ごと摘出します。全摘出手術は、再発を防ぐために最も確実な方法ですが、手術時間が長くなり、傷跡が残りやすいのが欠点です。ただし、きれいに縫合することで、傷跡を目立たなくすることができます。
当院では、患者さんの負担を軽減するために、全摘出手術の日帰り手術にも対応しています。事前の検査や説明を十分に行い、手術当日は短時間で手術を終えられるよう心がけています。
粉瘤手術の費用(3割負担)
粉瘤の手術にかかる費用は、治療内容や医療機関によって異なりますが、当院での目安をお伝えいたします。以下の費用は、健康保険を適用した場合の自己負担額(3割負担)です。
初診料 | 約900円 |
まず、初めて当院を受診される場合、初診料として約900円をご負担いただきます。
再診料 | 約400円 |
2回目以降の受診では、再診料として約400円をお支払いいただきます。
粉瘤の手術 | 約7,000円~14,000円 |
粉瘤の手術費用は、粉瘤の大きさや部位、手術方法などによって異なります。当院では約7,000円から14,000円程度が目安となります。
Q&A
粉瘤はどのような症状を引き起こしますか?
粉瘤は通常、皮膚の下に丸くて柔らかいしこりとして生じ、痛みはありません。しかし、感染すると赤く腫れて痛みを伴い、膿がたまることもあります。
粉瘤が自然に治ることはありますか?
粉瘤が自然に治癒することはほとんどありません。放置すると大きくなったり、感染して化膿を繰り返したりする可能性があるため、早期の治療をおすすめします。
粉瘤の治療方法には何がありますか?
粉瘤の主な治療法は外科的切除です。注射で局所麻酔を施した跡、粉瘤を袋ごと完全に摘出します。当院では5,000件以上の皮膚外科手術の実績を持つ院長が手術を担当しています。
粉瘤の手術は痛いですか?
手術では局所麻酔を使用するため、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。手術後に軽い痛みや腫れが生じることがありますが、痛み止めで対応可能です。またご希望により、麻酔注射の前に麻酔テープを使用し、注射による痛みも軽減しています。
粉瘤が再発することはありますか?
粉瘤は袋ごと完全に摘出することで再発の可能性は低くなりますが、まれに再発したり、治療した患部の近くに新たな粉瘤が生じたりする可能性があります。定期的な経過観察が大切です。
粉瘤の治療に保険は適用されますか?
粉瘤の手術や治療には健康保険が適用されます。ただし、美容目的での切除をご希望の場合は、保険が適用されないことがあるため、詳しくは医師にご相談ください。
- (参考文献)
- (監修者情報)
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小谷 和弘
日本皮膚科学会 皮膚科専門医
厚生労働省指定 麻酔科標榜医
日本内科学会 認定内科医